ビッチ狩り-2
「失礼します…」
そう挨拶をし中に入って来た女子高生は吉川真利愛であった。金田が見る限りスカートの丈は短く制服も着崩してはいるものの今時の女子高生と言った印象だ。非行に走るようなタイプではなさそうだ。しかし警察だと知っている自分らを、何か疾しい事を隠しているかのような表情が感じられた。真利愛は椅子に座る。
「あの…何か…。」
こちらの様子を探っているようだ。目が完全に脅えている。
「先生、ちょっと外して頂いても宜しいですか?」
金田がそう言うと怪訝そうな顔をした。
「いや、教師として状況は把握しておかないと…」
しかし保身ばかり考えていると見抜いている金田の言葉が突き刺さる。
「知らぬが仏って言葉もありますよ?知ってしまえばあなたにも責任が降りかかる事にもなりますが?」
山川はギョッとした表情を浮かべた。
「で、ではお邪魔なようですので…」
そそくさと出て行った山川。
「あんな教師がいるから生徒を守れない学校が増えるんだ。全く…。」
舌打ちしてドアを睨む金田。しかしその言葉が真利愛の警戒心を少しずつ溶かしていく要因になった。
ため息をついた金田は心を落ち着かせてから正面を向き真利愛の顔を見つめた。
「改めて伺います。吉川真利愛さんで間違いないですか?」
真利愛はコクっと頷く。
「真田竜彦という男はご存知ですか?」
「い、いえ…」
嘘をついているようには見えないが、釈然としない何か引っかかるような表情の真利愛。
「そうですか。実は女性の弱みを握って金銭を巻き上げている容疑者が浮上したんです。」
「えっ…?」
今度は明らかに動揺した。
「その容疑者が真田竜彦と言う男なんです。常習手段として覆面を被り、主に強姦を働いているようです。その時の写真を撮られ金品を脅し取っていた可能性がある事が分かりました。」
「…」
「彼の部屋を調べた所、金品を脅し取っていた男女の名前のリストが発見され、その中に吉川真利愛さん、あなたの名前があったんです。何か心当たりはないですか?」
金田の問いに目を合わせられない真利愛。脅えた様子でじっと下を見つめていた。
「真田竜彦は現在逃亡中です。警察に追われている身です。もう被害者に接触している余裕はありません。心当たりがあるのなら正直に答えて下さい。あなたはこの真田竜彦に心当たりはありますか?」
少しの沈黙の後、ゆっくりと顔を上げ、虚ろな瞳からスッと涙を零し、口元を震わせながら言った。
「名前は…分かりません…。でもそう言う男に…心当たりは…あります…。」
「そうですか。」
穏やかにそう答えた金田だが、真田竜彦への手がかりが掴めた事に興奮を覚えたのであった。