想い出のアルバム-9
(8)
季節の中に自分を置いて眺める日が続いた。
2か月が過ぎ、『今度……』が遠く感じ始めていた。心にもやもやとしたものが滞るようになり、やがて不安となって広がっていった。
「叔父さん、忙しいのかな」
母に、父に何度訊いたことだろう。自分で電話するのは怖かった。
「そういえばしばらく来てないな。たまには飲みに来いって言ってみるか」
「そうね。夏休みだものね。部活だって毎日はないでしょうから」
「訊いてみて。少しは英語、みてほしいよ」
「電話してみるわ」
衝撃は数日後に私にのしかかった。
「わかったわ、勲さんが来ない理由」
夕食時、母は浮き浮きした顔で父に言い、私にも笑いかけてきた。
「あのね。勲さん、お付き合いしてる人がいるんですって」
「ほう、そうか。そっちのほうで忙しいのか」
「同じ学校の先生で教科も英語ですって。なかなか言わなかったけど白状したわ」
「あいつもいい歳だからな。そろそろ身を固めてもいい頃だな」
「まだ結婚は具体的に決めてはないみただけど、前提として考えてるらしいわ」
「部活の顧問になったのはその人がいたからじゃないか?」
「案外そうかも」
笑って話す両親の言葉は途中から耳に入らなかった。
(そんなことって……)
私のアルバムは?
(叔父さんに、彼女……)
約束したのに……。
かっと熱くなった回転する想いが脆くも溶けていくのを感じていた。
その夜、叔父さんのベッドに全裸で仰向けになった。暑いけどエアコンはつけられなかった。古くて音がうるさいのだ。階下に響く恐れがあった。
汗ばむ両乳房を揉む。揉みながら乳首に指先を当てた。
(ああ、ここに……)
叔父さんの唇が……舌が……。
高まっていく想いの裏で、現実が冷たく私を見据えていた。
叔父さんに彼女ができた。結婚も考えている。……そこに私が入り込むことはできない。当然のことだ。大人の叔父さんが結婚する。自然な成り行きだ。
私が叔父さんと結婚するなど考えたこともない。高校生の自分、叔父と姪、思えばそれも意識したことはない。私はいつの間にか自らの女の体に翻弄され、『男』として叔父さんを求めていたのである。理屈なんかなかった。ただ求める想いと体になってしまったのだった。
胸からおなかに掌を這わせていく。中学の頃と比べるとかなり柔らかい肉がついたと思う。脚の付け根を摩っていると秘部の潤いが増してくる。最近は液が出るのがわかる。
秘毛を指で梳く。そこからは性器の盛り上がりが始まる。膝を立てて股を開いた。
(あ、垂れる……)
満ちていた液が肛門へと伝い、私はたまらず泉に指を浸した。そして突起に触れる。
「あうう!」
声が出て慌てて口を噤んだ。
触って驚いたのは走り抜けた快感の鋭さばかりではない。突起の大きさと硬さである。
(なに?これ)
コリコリとしてイボみたいにはっきり形になっている。こんなに硬くなったのは、
(初めて……)
それに、
(気持ちいい!感じる!感じるう!)
小刻みに指を動かし、割れ目の柔肉とともにぬめりを潜る。
(ああ!ダメ!)
ダメ、と思いながら動きは止まらない。それどころか、強く、強く圧迫を加えながら、
(ああ!)
のけ反る、体がのけ反ってしまう。その直後、中指が吸い込まれるように秘口に入った。
(!……)
指先とはいえそこに食い込んだのは初めてである。勢いあまってというより肉欲の必然の行為だったかもしれない。
(ここが……)
少しずつ指を差し込んでいった。自分で入れているのに別の力で埋め込まれていく感じだった。
根元まで入って、開いていた脚を伸ばして閉じた。
(あふん……)
細い指でも挿入感がある。締め付けると内部に快感の熱が延焼した。
(叔父さんが入ってきて、こうなるはずだった!)
疑似性交とでもいおうか、その時イメージが浮かんだのは叔父さんとのセックスだった。
(叔父さんのペニスが入ってる!)
脚を開いて目を閉じる。叔父さんの体が被さってくる。……
左手は乳房を揉み、『ペニス』となった指を抜き差しする。経験はないし、叔父さんのペニスを見たことはないからとにかく一体になった妄想の中に飛び込んで潜った。
挿入の快感は突起を刺激するのとはまた異質な感覚であった。初めて異物を納めた膣。
(熱い……)
次第に体が浮いていくような穏やかな気持ちよさが生まれ、持続し、やがて上昇に向かっていった。さらなる快感への期待感がもやもやと立ち昇って、追い求めるように指の動きが速くなる。高まるにつれ、ふと親指で押したクリトリス。
「くうう!」
膨張していた膣内からの昂揚が暴発した。一気に未知の領域に突入したのである。私はただ、もう、突き抜ける快感に全身を弓なりに反って唸るばかりだった。あとはほとんど記憶はなく、私は初めて絶頂を体験したのである。
大きく弾む胸、体は汗まみれだった。指は差し込まれたまま……。
(動いていた……いまも、動いている)
高潮した時、膣が収縮し、指がきつくなったことがぼんやり思い出された。到達した世界を理解出来ず、私は暗い天井を見上げていた。