今夜、七星で Yuusuke’s Time完結-2
樹里さんは一言も椿さんにはふれず、何をして何を考えているのか検討もつかない。
これだけ持ってかれてるって、どうよ?俺。
なっさけねー、俺。俺が振り回されるとかマジねーし。
つか、俺何で待ってんの?
うんうんと自分に頷き、厨房のまかないを黙々と食べる。
あれ、そーいやー全然女と寝てなくねぇ?
グラスに並々と注がれたトニックウォーターを流し込みながら、あー、と思い返してみる。
クリスマス以降の繁忙期もあってか、全く無かったな!
うーわー!マジかよ!
別に操たててるとかないし。頭んなか持ってかれてるけど、体は別じゃね?って、一月以上気付かないとか!
「あー、マジないわー!」
まかないを食べてた俺の叫びに、スタッフが驚いた顔で振り返った。あ、声に出ちゃったなー。はははは、と笑いで濁すしかない。
つか、今日土曜だけど。
いやいや、絶対来ないし。うん。
俺は最後の一口をトニックウォーターで流し込み、ふう、とナプキンで口を拭って食器を片す。
一服、と控え室の裏口から外に出ると冷たい北風に上着を着損ねた自分を恨む。
まあ、まあ、いいや。うん。
ジャリ、と火を点けフィルターを口に運び紫煙を吸う。
行き交う人々は忙しそうで、近くの飲食店やクラブの呼び込みはいつも通りの賑やかさだ。
あー、寒い。
マジで、激寒。
人肌恋しーよなー。
決めた、と灰皿代わりのアルミ缶に吸い殻を捨て立ち上がる。
誰か抱けばいいんだよ。
そう思い付くと後は簡単だ。
ホールをぐるっと見渡せば綺麗なオネーサンは沢山いる。ヤらせてくれそうな、寧ろ誘ってくる合図を笑って受け止めて耳元で甘く囁けばいいんだ。
「今夜一緒にいたいな」
そう。それだけ。後は仕事を終わらせて、ホテルに連れ込めばいい。
「イトカ、胸には自信あるんだよー」
囁き返すオネーサン、いや、イトカさんは豊満な胸を揺すって見せた。
いいねー、そのさばけた感じ。
「期待しちゃうな」
なんて囁けば、口角を上げてクスクス笑った。オーケー、今夜は決まりだなー。ちらりと腕時計を確認し、またね、と言って仕事に戻る。
時計の針は零時を少し過ぎていた。