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今夜、七星で Yuusuke's Time
【OL/お姉さん 官能小説】

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今夜、七星で Yuusuke’s Time完結-3



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くそさみぃー!
仕事を終えて店を出ると一気に凍える。片手を挙げるとガードレールにもたれていたイトカさんが笑った。

「お待たせ致しました」
「ふふっ、ほんと寒かったの!帰っちゃうかと思ったよー」
「ごめん、ごめん」

軽口を叩き合いながら、俺の右腕に腕を絡めてくる。ぐにゃり、とイトカさんご自慢の胸が主張し、コートの上からでも柔らかさを感じるほどだ。


その時だった。


ポケットに突っ込んであった携帯が振動し、リスペクトしてる海外バンドの着うたがけたたましく鳴り出した。

「あ、ごめんね、ちょっといい?」

イトカさんはニコッと笑ってタクシーを拾いに車道側まで行った。
誰から?と、鳴りまくる携帯を見れば《椿さん》で。
動揺、しながらも通話ボタンを押す指は止められなかった。

「はい、…………」

「………………」

声が掠れた。
喉がカラカラに渇いて、心臓がうるさい。
椿さんは何も話さないが、軽い息遣いが伝わる。周りの雑踏も聞こえないほど耳に押しあてた携帯に集中した。

「椿さん……?」

切れそうな糸を必死に繋ぎ止めたかった。

「……椿さ」
「ゆーすけ君、今」

二人の声が重なる。つーか、声が多重に聞こえた気がした。え?っと振り返り辺りを見回すと、初めて逢ったあの日の白いコートが目に飛び込んできた。

「椿さん、どうしてここに?」

スピーカー越しに語り、目線は真っ直ぐ椿さんを捕らえる。椿さんも俺の視線に気付き、じっと見つめ返してきた。

「ユースケー、タク来たよー?」

イトカさんが後ろから声を掛けてくるが、視線に縫い止められたように身動きがとれない。

「悪い。イトカさん、急用が出来た」

振り向かずに声を張った。
わざと椿さんにはっきり聞かせるようにしたかったのかもしれない。だが、椿さんは下を向き、電話を切り、逃げるように走り出した。

「イトカさん、ごめん!」

最後まで顔を合わせずにイトカさんを置いて走った。イトカさんが怒ったか悲しんだかなんて、正直どうでもいい。
椿さんがいたんだ。声を交わし、視線を重ね、数週間ぶりの気持ちがぶわっと膨れ上がった。

なんなんだよ……!

膨れ上がった気持ちは、怒りなのか嬉しさなのか判別できないほど混ざりあっている。
この気持ちをどう表現していいかすら解らない。椿さんを捕まえて、逢いたかった、と抱き締めるのか、何で来なかった、と問い詰めるか。
どっちも正解のようで、どっちも不正解にも思える。


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