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今夜、七星で Yuusuke's Time
【OL/お姉さん 官能小説】

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今夜、七星で Yuusuke’s Time完結-1

黙って椿さんの自宅まで歩いた。俺も椿さんも一言も話さなかった。寒くて切ない帰路だった。

「じゃあ、ね」

玄関ホールで、俺は乾いた唇を開いた。椿さんは軽く頭を下げ、部屋へと入っていった。二人の距離は重厚な扉に遮断され、あぁ、椿さんとも切れてしまった、と渦巻く飽和した気持ちにため息が漏れた。

「俺って向いてないんだろーな」

だらだらと歩きながら一人呟く。一駅分何気無く歩きながら、恋愛について考えてみる。
一人と長く続いた試しがない。っつーか、誰かと正しい付き合いなんてしたことないから、椿さんに対してどうしたらいいか検討もつかない。

「つか、本命とバッタリパターンに、遊びの俺がフォローとか無くねぇ?」

コンビニの灯りに引かれるように立ち寄って、煙草とホットコーヒーを手に備え付けの灰皿の前で一服する。寒さで悴んだ指先や体内に、温かさが広がっていく。
ガタンガタン、ガタン……と電車の走る音が響く。乗ればよかったな、なんて過ぎたことを考える。中途半端。この道も、俺も。

「あーあ、まだ歩くか」

ガコン、とゴミ箱に缶を放り込み、何も考えないように口笛を吹きながら歩き出す。
何も考えないように。
何も悔やまないように。








******


毎朝思うが、弾んだ気持ちで目覚めたためしはない。アラームを何度目かで止めて、どんよりのっそり起き上がって一日が始まる。
煙草をくわえて洗濯物を袋に詰め、髭を剃って風呂に浸かる。着替えたらごみを出し、ついでにコインランドリーに寄る。三十分弱、ケータイを弄りながら暇を潰し、乾いた服を袋に詰めて持ち帰れば1週間位はここに来る必要もなくなる。
アパートの住人に軽く頭を下げ、部屋に戻って一呼吸。パソコンを開いてメールを確認しながら音楽ソフトに改良点を加えていく。
そのうちベースに手を伸ばして新しいスコアの練習。
暗記、練習、アレンジ。
途中で固形の栄養補助食品をペプシで飲み下したら、あっという間にバイトの時間だ。
地下鉄を乗り継ぎ、七星に入り、業務をただただこなしていく。
勿論、客とのコミュニケーションや店内ラインの調整、バーテンダーの補助など体に染み付いた動きは滑らかだ。
そうやって毎日を独りで淡々とこなしてきたのに。
今日も明日も明後日も繰り返すというのに。
心が空っぽで仕方がない。
何をしても、何も響かない。

椿さんのせいだよな、絶対

思い当たる、あの凍える夜の帰り道。あれから全く連絡がない。
連絡どころか、店にも来ない。
来るかと期待して クリスマスが過ぎ、まだ来ないかと苛立ちながら年を越し、もう来ないのかと落胆しながら新年も成人の日も通りすぎた。


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