〈選ばれた姉妹〉-4
『ホッホッホ……流石だよ、こりゃあ想像以上に素晴らしいよ』
七三オヤジは少し小馬鹿にしたような笑みを浮かべ、引っ詰め髪の男も顔を崩しながら静かに頷いた。
『そういえば……今日の娘(咲良)は“飼育”を考えていたそうじゃないか?じゃあ愛と亜季も飼育するつもりなんだろう?それなら、部屋は二つあればいいよね?』
受け取ったデータに満足した七三オヤジは、長髪男に言われる前に姉妹に“個室”を用意すると約束した。
このデータの他に、また明日には別のデータも手に入るのだ。
監禁部屋の二つを用意するくらい、安いものだ。
『ンクククッ…分かってるじゃないか。あの姉妹は飼育してやるんだ……美少女をペットにするなんて、こんな贅沢で楽しい生活はないだろう?』
これからの日々を想像して興奮した目は、血走ってギラギラと赤く輝いていた。
『さて、その飼育部屋を見に行こうか?きっと気に入ってくれると思うよ?』
引っ詰め髪の男も、心なしか顔が紅潮している。
あのデータがあれば、足を棒にして美少女を探す必要はなくなるし、グッと狩りはしやすくなる。
“これから”が楽しみなのは、この事務室に犇めいている全員が等しく抱く感情であったのだ。
『よぉし、それじゃあ見に行くか』
三人の中で自らの地位を確立した長髪男は、初めて先頭になって歩いた。
前園姉妹を我が物に出来るのも、膨大なデータを所有しているから。
そして安全なまま、完全なる監禁と飼育が出来るのも、それ故だからである。
『あ、そうそう……愛と亜季ってさ、姉妹揃っての仕事が終わると、次の休みの時に二人だけでショッピングに行くんだって。データの中に書いてるけど、一応教えておくよ』
『なるほど……二人だけでねぇ……』
前園姉妹の行動パターンは、粗方は調べられている。
勿論、ここ最近の仕事スケジュールも、既に長髪男はデータとして収めてある。
もはや逃げられまい。
またも幼い姉妹が狙われ、悲劇的な運命のレールの上に、乗せられようとしている。
今週末の土曜日、姉妹は三人の鬼畜オヤジ達と会う。
その汚れなき瞳が汚れきった瞳を捉えた時に、自らに降りかかる絶対的な危機を読み取れる確率は、絶望的な数値でしかないだろう……。