投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

偽りの欲情
【OL/お姉さん 官能小説】

偽りの欲情の最初へ 偽りの欲情 7 偽りの欲情 9 偽りの欲情の最後へ

偽りの欲情-8

私は作務衣(さむえ)と呼ばれる着物みたいのを着せられて、慌ただしく働いた。
洗い物をしたり、野菜の皮を剥いたり掃除をしたり・・・
それは決して辛い事ではなく、みなさま親切でOL時代の押し付け合いとありふれた毎日の比べれば、ずっと楽しい仕事だった。
私の上には仲居頭と呼ばれる人がいて、その人が旅館の中の指示をする。
新居さんといって50代のおおらかな人だった。
他には場番頭さんといって、会社でいうところの経理部長にあたる人がいた。

私は何気に番頭さんが女将さんのご主人なのですか?などと新居さんに聞いてみた。
そんなはずはない事を私はよく知っている。
新居さんは「そうではないけど、お身内の方だ」とだけ言った。
思うにどう考えてもこの店の主のポストが見つからない。
あるいは予約を受け付けたり、営業したりとかって仕事があったのを今は他の人たちが分散してこなしているのかも知れない。

だとすれば、私が担う業務のどれかもあの人の仕事だったのかも知れない。

克也の旅館に潜り込んで早やひと月が過ぎた頃。
ひとつだけ私にも進展があった。
私が番頭さんの事を女将さんのご主人ですか?と知らぬふりを装って聞いてみたのも、ある確証があったと言える。
仲居頭の新居さんが言葉少なく、そうではないと答えたのも意味があった。

女将さんと番頭さんはデキている。
この家の人たちはみんなそれを知っていて、決して口には出さなかったのだ。
そしてこれは誰に聞いたわけではないけど、失踪したここの主人にも女がいた事も・・・
それで納得がいく。みんながそこには触れないのだ。
女将さんも番頭さんも他の人たちもそれぞれの意味でおっかなびっくりそこには触れないのだ。

一番、おっかなびっくりは私の方なのだ・・・

問題はどこで切り出すべきか・・・というところ。
もう、切り出せるわけがない。

ますます深い淵に入り込んだ気分だった。
女のマンションから出てきたあの人の体裁を諂ってたったひとつ吐いた嘘。
そこからどんどん深みに嵌って、私は少しでも日の光を求めてもがいてみただけなのだ。
プールの底の蒼い世界を思い出す。

そうしてそれはさらに思いもよらない事態に陥っていった。

物置から青磁の壺を取ってきてくれないかい。
番頭さんにそう言いつけられて物置を探っていたのは女将さんが寄合いだか会合だかでいない時だった。
装飾品を取り換えたりするのは何度か覚えた事なので、大きささえ分かればあとは箱に書いてあるからすぐに見つかる。
そう思って探したけど、この前まであったはずの箱が見当たらない。


偽りの欲情の最初へ 偽りの欲情 7 偽りの欲情 9 偽りの欲情の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前