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是奈でゲンキッ!
【コメディ その他小説】

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是奈でゲンキッ!X 『ミステイクス リンク』-6

「よーしっ! そうと解れば朝霞さんっ! 特訓しよう!」
「あっえぇーーっ!!」
「告白って言ったら、女の子に取って最大のイベントだ! きっと緊張するに決まっている! 緊張して、いざとなったら告(つ)げたい言葉も出てこないかもしれない。そんな事にでもなったら、せっかく勇気を出して憧れの相手に会っても、たぶん思いが伝わらないぜっ!」
 嘉幸は真剣な顔をして、そんな事を言い出だすと。ここは根性だっ! うんうん! と、やたらと無駄に気合を入れながら是奈に向かって、「がんばろう!」とばかりに、ガッツポーズまでして見せる。
「えっ、あの、そうじゃなくて…… 田原君、あのねちょっと聞いてよ……」
 是奈は、最早勘違いの極みに居るであろう嘉幸に向かって、自身の頭をパニクらせながら、それでも必死に真実を話そうとするが。
 嘉幸はそんな是奈にはお構いなしに。
「そうだっ! 清美ちゃん! そのキリンさんを貸してくれないか」
 そう言いながら、清美に向かって手を伸ばし、最早是奈の声など聞いちゃぁ居ない。
 清美も、何だか面白い事でもするのだろうかと、わくわくしながらも、嘉幸にお気に入りのキリンのぬいぐるみを手渡し。
 嘉幸はぬいぐるみを受け取るや、それを今度は是奈に手渡して、
「これを明日、朝霞さんが告白する人へのプレゼントだと過程して、俺がその彼氏役をするから。さあっ! 練習してみようっ!」
 そう言いながら、近くに有ったベンチへと腰を降ろした。
 その横にチョコンと、清美もニコニコしながら、腰を降ろす。
「えっ、でも…… あたし……」
「いいから早くっ!」
 嘉幸にせつかれ、こうなったらやけくそよ! とばかりに是奈は、渡されたキリンのぬいぐるみを嘉幸の鼻っ面へ突き付けると、裏返った声を出して叫んだのだった。
「好きですっ!!」
 叫びながら、何気に顔中真っ赤だったりする。
 恐らくこの瞬間、是奈の心臓は臨界点を遥かに越えて、爆発していたのかもしれない。最早何も見えず、何も聞こえず、全ての時間がここに停止したかのように、身体中を硬直させて、ぬいぐるみを差し出しながら、前かがみになった姿勢でお辞儀をしながら、微動たりともせずに固まっていた。
 しばらく間が有り。
 腕組みをして、何やら考え込んで居るような素振りをしていた嘉幸ではあったが、そのうちゆっくりと立ち上がると、是奈の肩を軽く叩きながら、
「駄目だな……」
 そんな事を、呟いた。
 是奈もそれを聞いて、我に帰ったのだろう。顔を上げ嘉幸を見上げながら「へっ!」と、言葉を漏らす。
「朝霞さん…… 気持ちは解るけど、それは無いんじゃないかなぁ」
 何やら意味深げに嘉幸はそう言うと、またもと居たベンチに座り直し。
「いきなり『好きです!』なんて言ってしまうと、後が続かなくなるぜ。なんて言うのかなぁ、言われた方も面食らったりしてさ『おいおい何それ、ギャグ!?』なんて言い出されたりしたら、それこそ大変だ」
 そんなレクチャーを真面目な顔をして、是奈に向かって仕出したりする。
 そんな嘉幸の話を聞いて、是奈も「あっ、はぁ……」と、呆けた様子だったが。
 嘉幸は嘉幸で、そんな是奈を見ながら、やれやれこれは難易度が高そうだなっ! などと顔を渋らせると。
「例えば。『先輩! わたし先輩の事が前から好きだったんです!!』とか。『わたし、初めて見た時から、あなたの事を思っていたのっ!』とか、前置きを入れた方が良いと思うけど」
 などと、話を続けた。
 嘉幸は手振り身振りを加えながら、第一声はもう少し戦略的なことを考えた言い方をした方が良いだろうと、真剣極まりなく、是奈へのレクチャーにも力が籠(こ)もる。


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