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是奈でゲンキッ!
【コメディ その他小説】

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是奈でゲンキッ!X 『ミステイクス リンク』-5

「あれっ!? ……田原君…」
 妹を探すべく、自宅からすぐ近くにある『藤見晴市グリーンサンクチュアリ公園』へとやってっ来た是奈であったが。
 公園に入るなり、我が憧れの君である『田原 嘉幸(たはら よしゆき)』と、妹の清美が仲良く遊んでいる姿を見つけて、どうやら面食らった様子である。しばらく立ち尽くし、呆然と二人のことを眺めていた。
「あっ、お姉ちゃんだ! お姉ちゃーーんっ!」
 どうやら、ロウ人形のように固まって動かずに居た是奈のことを、清美の方で気づいたらしい。
 座り込んでいたベンチから勢い良く立ち上がると、大きく手を振って、立ち尽くす是奈を手招きしていた。
 そんな清美のはしゃぐ姿を見て、嘉幸も彼女の視線を追うように、その先に居る是奈へと顔を向けた。
「やあっ、朝霞さん! 元気ぃ!」
 戸惑いながらも近づいて来た是奈に向かって、嘉幸も声を掛けたりする。
「えっ! ……田原君。 あたしのこと……知ってるの」
 是奈は、憧れの人を目の前にして緊張しまくりながら、それでも、口元に手を当てながら驚いたように嘉幸に尋ねてそう言った。
「なに言ってるの、1年の時同じクラスだったじゃないか。それに『氷坂下り最速タイトルホルダー』だって聞いたけど、それって朝霞さんのことだろ。藤見晴高の有名人だもの、知らない奴は居ないさ」
 嘉幸はそう言うと、知ってて当然だよ! とでも言いた気に是奈の顔を仰ぎ見ながら、フフンッ! と、鼻で笑って見せたりする。
 是奈は変な事で有名に成った自分自身が恥ずかしいやら、気まずいやらで、顔を真っ赤にしながらも。
(そう〜かぁ、田原君……あたしのこと覚えていてくれたんだぁ。話をしたことは無かったけど、……そうだったんだぁ)と、ずっと片思いでしかなかった憧れの彼が、自分の事を知っていてくれた、そんな思いに感動してか、嬉しさの余りに身体を震わせたりもする。それと同時に、自分の心臓が今にも破裂しそうなぐらいに、早まるのを感じていた。


 そんな純情女子高校生の是奈が、歓喜の余りに声を失っていると、何やら清美が嘉幸に向かって言い出した。
「お姉ちゃん、あした告白するんだって」
 そう聞いた途端、嘉幸は少し驚いたような顔をする。そして。
「そうかぁ! そいつは凄いぞっ! なかなか出来ることじゃないよ! その勇気は見習うべきものが有るなっ!」 
 と、なにやら感心したりもする。
 当の是奈は、バカっ! 何言ってんのよ、この子ってば! と、どぎまぎしながら焦った様子である。
 そんな姉には、お構いなしに。
「それでもってぇ、手作りのお菓子を作って、プレゼントするんだってっ」
 清美は、今度はそう言って嘉幸に向かってVサインを出すと、ニヒヒッと笑って見せた。
「おおっ! そいつは益々もって偉いよっ! そんな献身な人ってなかなか居ないだろうにっ! 朝霞さんって、なかなかどうして、良い人じゃないかっ!」
 嘉幸は先ほどにも増して、是奈の健気な人柄に感動したらしい。顎に手を当てながら「うんうん・・」と首を縦に振って、そんな是奈の美談に、浸(ひた)っていた。
「えっ! あのっ……ちょっとぉ……田原くぅん」
 是奈は、憧れの田原嘉幸に誉められて、嬉しい事この上無いものの。激しく誤解したらしい嘉幸の言動に戸惑ってもいた。片手を嘉幸の方へと力無く突き出して、どうしようぅ…… 田原君ってば、絶対勘違いしてるよ…… と、伸ばした腕をプルプルと振るわせるばかりである。


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