カピバラと俺-7
腹を抱えて笑い転げる俺にキレた茜は、
「もう、なんであたしってば、こんなに男運がないのよ!」
と、悔しそうに俺の腕をバシバシ叩いてくる。
「ホント、そうだな」
笑いすぎて、滲み出た涙を人差し指で拭いながら頷く俺。
視線の先には、下唇を思いっきり付き出して、むくれっつらをする茜の顔。
そんな彼女の顔を見ていたら、フッと眉間に寄せていたシワも緩んできた。
小さな頃から、人一倍ませていて、恋に憧れる気持ちは誰よりも強かったのに、空回りばかりしている茜は万年振られてばかり。
今回やっと手に入れた幸せだって、相手はとんでもないクズだったし。
コイツに運命の相手なんて、本当にいるのかな。
八つ当たり気味に、俺の腕を叩き続ける茜を、目を細めて見ていると、茜が不満はそうに口を開いた。
「人が不幸のドン底にいるってのに、あんたは何ニヤニヤしてんのよ」
「ん、ああ悪ぃ」
「あーあ、イケメンには振り向いてもらえない、かと言ってフツメンと付き合えば実はホモなんて、あたし、もう一生マトモな恋愛なんてできないかもしれない」
独り言のように愚痴を呟く彼女とそれを聞いてやる俺。
結局、俺達はいつものパターンに戻るのか。
だけど、いつもならウンザリするはずのこのお決まりのパターンが、なぜかとてもくすぐったく感じる。
恨めしそうにこちらを睨むその表情すら、なんだか微笑ましくて。
そんな彼女のむくれっ面をしばし眺めていた俺は、気がついたら、
「お前さあ、もう俺にしとけば?」
と、そう口を開いていた。