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やっぱりそこにある愛
【コメディ 恋愛小説】

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カピバラと俺-6

「あたしと付き合ったのは、そんな自分と決別して、普通の恋がしたかったからなんだって。あたしと一緒にいると楽しいし、これでノーマルになれるって思ってたらしいんだけど……」


そこまで言ってから、彼女は忌々しげに盛大な舌打ちをして、


「でも、やっぱり街を歩けば男ばかり見てしまって、変な妄想ばかりしちゃうんだって! もう、めっちゃキモい!!」


と叫んでは、俺の身体をドンと突き飛ばして、そのまま玄関マットの上に突っ伏した。


ウォォォ、とトドのような悲痛な叫びを聞きながら、ようやく状況を把握していく。


……なるほど、茜にドン引きするくらいの性癖をカミングアウトして去ってもらう作戦か。


確かに、恋愛ビギナーのお相手がショタならば、ヘビー過ぎる。


「じゃあ、お前から彼氏を振ったのか?」


そう訊ねると、茜はガバッと身体を起こしてこちらを睨みつけた。


「当然でしょ!? 『こんなオレでも受け入れてくれる?』なんて言われたって、気持ち悪すぎて絶対無理!! 腕掴まれた瞬間に鳥肌がブワッて立ったのよ! あれだけ好きだったけど、もういっぺんに冷めた! もう和史と付き合ったこと事態が汚点だわ!」


言いたいことを全て言ったとおぼしき茜は、怒りで顔を真っ赤にしながら肩で息をしていた。


俺はそんな茜を呆気にとられて眺めていたけれど、そんな必死な茜を見ているうちに、とうとう俺は吹き出してしまった。


「ちょ、ちょっと! 笑うなんてひどいじゃない!!」


「いや、悪ぃ。だって、そんな変態ありえねえじゃん」


俺に脅されて、和史くんが取った奇策。


そんな変態、滅多にいるわけがないのによくもまあそんな、明らかに子供だましな嘘を吐く和史くんと、それを信じてドン引きする茜のやり取りを想像すると、笑いが込み上げて止まらなかった。


でも、まあ、及第点としてやるか。


事実をバカ正直に話したり、冷たくしたり、いきなり音信不通になるような別れ方をしていたら、地の果てまでも追いかけて殴ってやるつもりだった。


でも、こんな別れ方なら、和史くんに未練なんて残らないだろうし、現に、茜はこの恋自体をなかったものにしたくてたまらないようだし、な。






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