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やっぱりそこにある愛
【コメディ 恋愛小説】

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カピバラの来襲-1

ピンポンピンポンピンポン。


あー、せっかく風呂に入る所だったのに。


仕事を終えて、飯も済ませ、後は風呂に入ろうと湯を張っていた所に鳴った、けたたましいインターホンに、反射的に舌打ちをする。


今日の金曜ロードショーは、待ちに待った『天空の城ラピュタ』だ。


俺はこれを観るため、仕事を早く切り上げ、飯もさっさと済ませ、ビールとつまみを用意してたってのに。


つまみだって、さきイカやチータラなんかの乾き物の他に、スナック菓子を各種、さらにはデザートのアイスまで用意して。


風呂上がりにフカフカのソファーに寝そべりながら、ラピュタを観る。


そんな、彼女もいない寂しい独り身の楽しみを奪ってくれたドア越しの主に、ため息を一つ。


長丁場になりそうなのを予見した俺は、先に風呂場の水道を止めてから、


「あー、だりい」


と、頭を掻きながら玄関に向かった。



   ◇   ◇   ◇



「元気ー!!」


ドアを開けると、開口一番、そう叫んだ奴は、涙で崩れた化粧と酒臭い息を撒き散らしながら、狭い玄関になだれ込んできた。


あ、奴が「元気ー!!」と叫んだのは、挨拶するときの「How are you?」的な意味合いの「元気」じゃない。


「元気」ってのは俺の名前なんだ。


生まれた時は、2,000グラムにも満たない未熟児だったという俺に、どうか元気に育って欲しいという願いを込められてつけられた名前。


そんな両親の願いの甲斐あってか、今では、すくすく健やかに育ちすぎて、ちょっと出てきたお腹が気になる26歳だ。


「なんだよ、茜。俺、もう寝るんだよ。早く帰れバカ」


「ひどいぃぃ!! あんた、それでも友達なの!?」


そして、据わった目で俺の胸ぐらを掴み上げる、凶暴な女は、幼なじみの茜である。


「人ん家来ていきなり家主の胸ぐらつかむような友達はいねえ」


「あっ、ウソウソ! ごめんなさい」


慌てて茜はその手を離したかと思うと、急に上目遣いになって、


「お願い、今夜は一人になりたくないの」


と可愛らしい声を出した。




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