カピバラの来襲-4
「どうせ今回もハイスペックな男だったんだろ?」
すると、茜は下唇を突き出し、黙って頷いた。
やっぱな……。
コイツはカピバラのくせに、やたら理想が高い。
好きな芸能人はすべてイケメン、身近で好きになる男もスクールカースト上部にいるような、リア充(これももちろん顔がイイ奴限定だ)ばかり。
そういう男の尻を追いかけてばかりだから、いつまでたっても彼氏ができねえんだ。
そもそも、そういうイイ男は当然他の女だって狙うだろ? それもイイ男に見合った、それ相当のレベルの女が。
で、そこそこレベルの高い女とカピバラが並んでいて、どちらを取るか……言わずもがなだな。
「だからお前、身の程を知れとあれほど言ってたじゃねえか。それを何で、いつもいつもイケメンばかり狙うんだ」
俺は茜にため息をつきつつ、ベッドに腰掛けて、テーブルの上に広げられたチータラを一本、口に放り込んだ。
要は、お前にゃイケメンはGETできねえ、そういうことなんだ。
「だって、34歳バツイチだったから、イケると思ったんだもん!!」
負けず嫌いの茜は、対抗するように、俺がつまみ出したチータラを袋ごと奪い取って、一気に5,6本口に放り込む。
ムシャムシャとチータラを食べだす茜は、その一方で俺にスマホを渡してきた。
相手を確認しろ、と目だけで訴えてくる。
そこには茜が登録している婚活サイトの画面が映し出されていた。
基本、茜は俺になぜかオープンで、こういう婚活の活動内容を逐一報告してくれる。
おかげでこちらは登録もしていないのに、婚活サイトの利用方法まで詳しくなってしまったのだ。
茜のページに飛んで、メッセージのやり取りを眺めていくうちに今回のお相手の写メが表示された。
ううむ、やっぱりイケメンじゃんか。
今回のお相手、山田さんは34歳、バツイチ子無し。広告代理店で働く男だった。