『graduation番外編〜彼女が嫌いな彼女〜』-4
「今はどう思うんですか?」
「今は......そうだなぁ。人にお裾分けしたいくらい幸せなんだろうな、って思えるようになったかな。」
ホントだろうか。
結局、それ以上反発するのも賢くないと思って、話を変える事にした。
「センパイ。センパイは4年生ですよね。誰と仲良いんですか?」
とりあえず無難な話題。
「未来とか里美とか佐伯かなぁ...」
女に興味はない。
「佐伯先輩、頭イイですよね〜」
「学者志望だからね。」
雪見先輩の手は全く止まることなく、私に背を向けたままだ。
「そう言えば、浅野会長とも仲良いんですか?」
さっきの香子の話を思い出して尋ねてみると
「あぁ、セフレだから。」
なんてことを言い出した。
思わず固まる。いきなりカミングアウト!?
あたしが言葉を失っていると、雪見先輩はそのままの姿勢でクスッっと笑った。
「う・そ」
からかわれた。
やっぱコイツ食わせ者だ。
悔しくて話をとりあえず先に進めた。次は何故か後輩に一番人気の先輩。
「都築先輩は―――」
雪見先輩の手が止まったのを、あたしは見逃さなかった。
だって、それを待っていたから。
誰にでも弱点があるってことを教えてくれたのは、やっぱり姉だったっけ。
「彼女とか、いないんですかねぇ。憧れなんですっあたし。」
ゆっくりと雪見先輩が振り向いた。
正面からきちんと見た先輩はやっぱり綺麗だ。
溜息が出るほど。
「好きなの?都築が?」
真っ直ぐに、目を見据えてくる。
フイと逸らさずにはいられない。
「やだなぁセンパイ。憧れですよ〜アコガレ。」
そう言ってパシンと雪見先輩の肩を叩いてみた。
先輩は「ふぅん」と言うと、また荷造りを始めた。