投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

『graduation』
【青春 恋愛小説】

『graduation』の最初へ 『graduation』 34 『graduation』 36 『graduation』の最後へ

『graduation番外編〜彼女が嫌いな彼女〜』-5

それから私は都築先輩という人の観察を始めた。

実はそれまでそんなに興味はなかったのだ。

都築先輩は優しい。誰にでも。だから後輩に一番人気なんだ。

でも......

「あゆみ姫、都築先輩にご執心って噂でてるぜ、怖いなサークルって。まるで村社会だ。」

300円の学食うどんの乗ったトレイを机に乗せながら、サークルで1番の仲良しの隆志が面白そうに言った。

女友達のいない私には隆志はいなくてはならない存在だった。

大学やサークルなんて所詮、やっすい結婚相談所のようなものだ。

そこで条件に合った男を見つけて付き合ってみて、合わなかったら次の男に乗り換える。

だからサークルの仲は常にカップルでいっぱいだし、元カレ元カノのオンパレード。

すったもんだの挙句どちらかがやめたりする。人類皆兄弟みたいな状態になっているところだって珍しくない。

発情期のオスとメスが狭い空間に一緒にいるんだから仕方ない。

「なに、考えてんだよ。こんなイイオトコが目の前にいるのに。」

隆志が箸の裏で私の頬を軽くつついた。

「ごめんごめん。何?都築先輩の話だっけ?」

「そ。」

「別に。ただちょっと興味があっただけ。雪見先輩と仲良いみたいだから。」

そのあたしの言葉に隆志がほっとした顔をする。

この男があたしを好きなことくらい分かってる。

けど、あたしはあたしを好きな男を好きになったりはしない。

「なんだ。でも雪見先輩と都築先輩仲良いのか?雪見先輩はサークルあんまり来ない人だから分からないけど、喋ってるの見たことないぜ。」

そうなんだよねと思う。

雪見先輩が都築先輩を好きなのは、最初に会った時から分かった。

あんな反応バレバレだ。

しかもいつだって、彼女の瞳の端には都築先輩がいるのをあたしは見逃さなかった。

けど、都築先輩は?

なんで2人は喋らないの?雪見先輩は仲悪い人を好きなの?

「お前、雪見先輩好きだよね。いつも目で追ってる。」

隆志の言葉に少しだけ驚く。

「そんなに顕著?」

「いや、いつもお前見てるからなんとなく分かる。」

「っていうか完璧すぎて、なんか信じられないんだよね。雪見先輩って。」

さりげない口説き文句を完全にさらりと流した。


『graduation』の最初へ 『graduation』 34 『graduation』 36 『graduation』の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前