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ヒューマン・ロール・プレイ
【調教 官能小説】

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〜 家庭科その1 〜-4

「きゃあっ!?」

 22番さんが悲鳴を上げました。 口許を手で覆って息を呑んで、上手く言葉が出てこない様子で立ち竦みます。 そりゃそうですよね。 まさか、針を自分の手で乳首に突き刺すなんて、予想できる筈がありません。 

「せ、先輩――ッ」

 思わず駆け寄ろうとした私を、けれど、【B29番】先輩が制しました。 先輩は、冷や汗をかいてはいるものの、それでも自然な笑顔です。

「大丈夫大丈夫。 傍目(はため)に見えるほど痛くない」

「細くて撓(しな)るから刺したって血もでないし、もちろん傷跡も残らないです」

「あ、痛くないっていっても、それほど痛くないってだけだからね? 刺したときはビリビリッてするよ。 すごく細い分、頭の奥にツーンてくる感じ」

「慣れたらどうってことないです」

 驚いて呂律が回らない私たちの反応はお構いなしに、先輩方は次々と乳輪に待ち針を指してゆきます。 つぷり、つぷっ、つぷり、つぷりゅ――キツく革製のバンドで絞った上で、左右合わせて20本近い針にまみれた先輩方の淡い乳輪。 どれもハリネズミのように痛々しくて、先輩たちが自然体だからなおさら、私たちには直視できませんでした。

「多分みんな怖気づいて、誰も1本目が指せない。 そのまま時間だけ過ぎるっていうのが最悪なパターンで、こうなっちゃうとどうしようもない」

 つぷり、つぷり、つぷり、つぷり。

「2番はデカいおっぱいしてるんだし、脂肪がつまって鈍そうだし、楽勝です。 22番もそこそこおっきいから余裕です」

 つぷっ、つぷっ、つぷっ、つぷっ。

「ちょ、にに、大きさと痛さは関係ないって。 それってただの偏見だってば」

 つぷつぷつぷつぷ……。

「牛さん連中の気持ちなんて知りません。 とにかく、しっかりお手本役をこなすです」

 怯む私たちを尻目に、先輩方はテキパキと針を進めていました。 時折待ち針を止めたり、また抜いたり、糸を変えたり、長さが違う縫い針に持ち替えたり。 針を変えるたび、当然ながら前の針を乳輪に挿し、別の針を乳輪から引き抜きます。そのたびに針の尖った先端が青白く鬱血した胸に吸い込まれ、針と胸が接した該当部分が、時に微かに、或は大きく震えました。  

 つぷり、つぷり、つぷり、つぷっ。

 特別に細いせいか、もしくは材質に秘密があるのか知りませんが、肌に抜き差ししているというのに、針に血は一滴もついていませんでした。 肌にしたところで、尖ったものを刺したんだから傷が残るはずなのに、見ている分にはそれすら気づきませんでした。

 そうして15分ほど経過したでしょうか、小さなファイルケースが完成しました。 先輩方が肌に針を刺した回数ですが、少なく見積もって30回は超えていたと思います。 見ているだけで胸がチクチクして、背筋のゾクゾクが止まりませんでした……。 この後で私たちが練習するとすれば、先輩のように手際よく出来るわけがないから、きっと、倍の60回は刺すことになると思います。 泣かずにやり遂げられるか、全く自信はありませんが……やるしかないですよね。 

 そっと手の甲を抓ってみます。 鋭い痛みに泣きそうになります。 でも、死ぬことはありません。
 針だって一緒、先輩が我慢の手本を見せてくれたんだから、我慢できることが分かっています。 死ぬことだってないんだし、だとしたらどうってことはない筈です。 やればできる、きっとできる――そう自分に言い聞かせながら、

「はい。 次はお前たちの番だから」

「はい! よろしくお願いします!」

 【B29番】先輩が差し出した私用の裁縫セット。 しっかり先輩の瞳を見つめながら、怖じることなく受け取ります。 ちょっぴり手が震えていたのは、それくらいは許してください。 中から革バンドを取り出して、ひんやりする革を胸にあてて、紐をひっぱって乳房を搾って――ゴクリ、唾を呑み込んでから、私は針を指先に摘まみ、胸の先端にもってゆくのでした。

 


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