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真田拾誘翅(さなだじゅうゆうし)
【歴史物 官能小説】

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拾捌-2

 千夜はいったん下がると、早喜の姿を求めて陣内を歩き回り、見つけると物陰に娘を引き込んだ。

「早喜。『影負ひ』に取りかかる前に、おまえにひと働きしてもらわねばならぬ」

「何でございましょう?」

「殿の、伽の相手を務めよ」

「えっ?」

早喜は我が耳を疑った。

「乾坤一擲の戦を前に、殿は高ぶっておる。あのまま戦場に出れば気負いのあまり采を誤るおそれがある。今、おまえとまぐわい、いったん気を鎮める必要があるのじゃ」

「な……なぜにわたしがお相手で?」

「おまえには、春伽(はるとぎ)早喜という二つ名があろう。おまえと寝た男は春の気分になるという。その特質で殿を鎮めてさしあげるのじゃ」

早喜はうつむき、押し黙った。
 千夜は我が娘が幸村に対して恋慕の情を抱いていることを薄々気づいていた。『影負ひ』により命を落とす前に、早喜に女として最後の思い出をこしらえてあげたかった。それが母として今出来る、唯一の贖(あがな)いだった。

「かしこまりました」

やがて、早喜は顔を上げた。張り詰めた顔だったが、耳だけが、わずかに紅潮していた。

「粗相のないようにな……」

「……はい」


 小半時後、陣内奥、仮設えの寝所。
 幸村は、やってきた者の顔を見て驚きの表情を浮かべた。が、それは瞬時のことであり、すぐに落ち着いた声で、褥(しとね)に座るよう早喜を促した。
 もうすぐ二十歳の傀儡女は緊張した面持ちで正座する。横座りして科(しな)を作るということもせず、まるでおぼこ娘のようである。

「わしの生涯最後の女は早喜、おまえであるか」

幸村が優しい口調で言いながら隣へ座る。

「さ…最後だなどと……おっしゃらないで……ください」

「いや……、おそらく最後であろう」

幸村の笑みを湛えた瞳の奥に「死の覚悟」が潜んでいた。

「左様な折……わたくしごときが伽を務めることは……」

幸村は早喜の肩に手を伸ばし、ふわりと引き寄せた。

「いや。早喜のような愛(う)い娘が相手で、わしは嬉しいぞ」

思いもかけない言葉に触れ、早喜は一気に頬を赤らめる。そんな娘の肩をさらに抱き寄せ、幸村はゆっくりと横になった。

「思えば……早喜が十歳の時、わしがおまえをおなごにしてやったのだったなあ……。こうして同衾するのも、およそ十年ぶりか」

早喜は何も答えず、目を伏せていた。

「しかし、早喜も立派になったものじゃ」

幸村の手が、肩から背中、そして腰を優しく撫でた。こうして嫋やかに育った娘が、今日の戦の折、『影負ひ』施術中に被弾し、落命するかもしれぬと思うと、幸村は心が痛んだ。そして、早喜をグッと抱きしめた。

「!………………………………」

幸村の胸に頬を埋め、早喜は惑乱した。驚き・戸惑い・嬉しさ・気恥ずかしさ……これらが一気に身体に充満し、痛いほどの動悸がした。そして、その動悸は、幸村の口吸いにより、さらに激しいものとなった。

 仄かな灯明の光に浮かぶ早喜の上気した顔は、じつに愛らしいものであり、幸村は接吻を繰り返しながら、己が陽物に血が通うのを自覚した。
 早喜の衣を脱がせ、乳房を愛撫し、尻を撫でていると、男根がいつになく張りを帯びていることに気づいた。
 未明には出陣を控えており、女体が完全にほぐれるまでじっくりと愛撫を施す余裕はなかったが、幸村は顔を早喜の股間に埋め、口で女陰を火照らせることにした。

 早喜は秘部に幸村の唇を感じ、ビクリと反応した。さらに、陰核に舌の動きを覚えると、身をよじって可愛く喘いだ。
 そして、愛撫で気分が高まり、快味が秘陰に漂うようになると、幸村に注ぐ視線が熱くなった。

 早喜の瞳の色を察知し、幸村は「では、参るぞ」と低く言い、女陰に亀頭を押し当てた。
 グッと腰を沈めると、鈴口は心地よい抵抗を暫時覚えた後、ズルリと膣口に分け入った。
 跳躍・疾駆が傀儡女随一である早喜の下肢は引き締まっており、膣の具合もこの上ない。幸村は味わうように、ゆっくりと抽送を始めた。

 早喜は思い人の熱い滾(たぎ)りを膣に目一杯感じ、心の中で叫んでいた。

『嬉しい…………、嬉しい…………、嬉しい…………!』

早喜は、幸村を愛していることを、あらためて自覚した。

 膣襞も喜び、ひっしと一物にしがみついている。快味が後から後から湧いてくる。こんなことは今までになかった。好いている男と交合することは、こんなにも気持ちいいのかと、思わず相手の背中に腕を回した。

 幸村は心地よい締め付けを味わいながら早喜の反応も賞味していた。顔を赤らめ喘いでいるのだが、あけすけな嬌態ではなく、可憐さを内包していた。
 腰の振りを速めて気を遣らせようとすると、控えめに悶え、時折、我慢ならずに甲高い声を漏らす。背中に回った腕の力が強まり、指が皮膚に食い込んでくる。


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