NFP-5
さわちんこと小沢有佳と若菜が握手をしている背後で目を輝かせているのは石黒さとみであった。
「さ、さわチンさん、私、大・大・大ファンなんです!!よろしければサイン下さい!!」
頭を深々と下げ色紙を差し出す。
(そ、それっ手私にサイン貰うための色紙だったんじゃ…)
若菜はそう思った。しかし自ら断ったのだ、つべこべ言う資格はないと思い言葉は慎む。
「ありがとう!いいですよ〜!」
気さくにサインに応じるさわチン。被害妄想かもしれないがサインを断った自分が器の小さな人間に思えてしまった。
「ありがとうございますぅ!!」
感激しきりのさとみを見て若菜は思った。さわチンと自分のサインの記された色紙を貰ったらきっと一生ものの宝物になるのではないか、と。若菜は笑顔で言った。
「やっぱ私もサインしてあげるよ。」
ニコニコしながら色紙を受け取ろうと手を伸ばす若菜。しかしさとみはまさかの態度に出る。さわチンのサイン色紙を守るように胸に押し当てながら言った。
「えっ!?い、いいですよ…」
若菜にとって意外過ぎる言葉に一瞬固まる。私の聞き間違いかな…、そう思ったが、良く見るとさとみは迷惑そうな顔をしていた。
「してあげるってば。」
「け、結構です…」
笑顔が引きつる若菜。断られた恥ずかしさは半端ない。こうなるとムキになる。
「してあげるってば!さっき欲しがったでしょ!?」
「せっかくさわチンさんのサイン貰ったのに余計なモノ書かれたら困るんです!」
「よ、余計なモノ…!?石黒さん!渡しなさい!サイン書かせなさい!!」
もはや大人げない。顔を真っ赤にしてキレ気味に強引に色紙を奪おうとする。
「な、何するんですか!?」
「私が…この私がサインしてあげるって言ってるのよ!?」
「だ、だから何ですか!?要らないものは要らないんですっ!!」
「よこしなさい!!」
「ヤダっっ!!」
逃亡するさとみ。
「あ、こら!待ちなさい!!」
「きゃー!!」
会議室内を走り回る2人は笑い声に包まれる。そんな中、吉川啓吾は一人だけ冷めた視線を送るマギーが気になっていた。結局若菜に捕まり強引に色紙にサインされ半ベソをかかされてしまったさとみであった。