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耳にキス、キス、キス。
【女性向け 官能小説】

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-2

 カーテンを開け放した窓。
 細く開けた窓から五月の風がレースのカーテンを揺らし、部屋の中の空気を入れ替える。

 南側の部屋はなんて気持ちがいいのだろう。
 足を投げ出してふたりでこうして寝転がっていると、まるでもう何年も前からこうしているかのように錯覚する。

 同じにおいのする服を着て、お昼ごはんは何を食べようかと話をする。
 パスタがいいかな、それとも季節を先取りしてそうめんはどう?
 くすくす笑いながら、ヒロキくんがごろりとわたしのほうを向いた。
 わたしも顔だけヒロキくんのほうへ向ける。目が合う。また、くすりと笑う。

 清潔なシャツ。光を受けて輝く指輪。ラグからフローリングへはみ出した脚。
 ヒロキくんがわたしの耳に触れた。ふちを優しくゆっくりとなぞっていく。

「あー。幸せだなあ」
「わたしも。幸せ」

 今日は時間がゆっくりと過ぎていくように思えた。
 アイスコーヒーを食後に淹れようねと約束をする。ヒロキくんはわたしに、わたしはヒロキくんに。

 絡めあった脚と脚。
 ヒロキくんがわたしにキスをする。

「沙保さん。愛してる」
「ヒロキくん……。わたしも、愛してる……」
 
 ヒロキくんがわたしに覆い被さって再びキスをする。
 素肌のあたたかさや、唇を撫でるように動く舌がわたしを潤わせた。

「沙保さん──」

 ヒロキくんがわたしのリネンシャツのボタンをひとつずつ丁寧に片手で外しながら、首筋に舌を這わせる。
 わたしは思わず甘い声を洩らした。

 ヒロキくんの手が胸元をまさぐる。
 舌が耳を愛撫し、わたしは蕩けるような感覚に酔いしれた。

「ふたりだけの生活。僕、ほんとうに幸せだよ。沙保さんを閉じ込めておける……あいつは絶対にここへは来られないし、毎日こうして抱き合える……」

 耳に甘い吐息を感じながら、わたしは目を閉じた。身体がヒロキくんの指の動きにあわせて反応する。
 
 この部屋を決めた日、わたしは下着をすべて新調した。
 今ヒロキくんが外したブラも、新生活が始まる前に買ったもの。
 繊細なレースがあしらわれた、桃色の下着。ヒロキくんが可愛いと絶賛してくれた──。

「沙保さん、ずっといっしょだよ」

 肌を合わせるたび、わたしたちはよりいっそう深く結び付く。
 しっとりと潤ったふたりの身体が、日を追うごとにますます馴染んで一体感を増す。
 ヒロキくんがわたしの弱い部分を正確に捉え、わたしはヒロキくんを身体全体で悦ばせることができる。

 わたしたちは、ふたりでひとつの生き物になりつつあった。
 どちらか一方が欠けては成り立たない。
 毎日を正しく楽しく生きていけるのはお互いの存在があるからだ、というほどに。


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