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桜の降る時
【初恋 恋愛小説】

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聖夜の約束-3

 こんな話聞いたら、蓮はなんて思うだろう、とまた少し不安になった。
 「そっか。俺のほうこそ霞に誤らなきゃな。受験だけでも大変なのに、余計な考えごとさせちゃって。ごめんな、霞。」
 初めて聞く蓮の落ち込んだ声。あたしはそんな蓮の声を聞いていたら申し訳ない気持ちでいっぱいになってまた泣いた。
 「今まで話したことなかったよな?なんで俺が霞を好きになったのか。」
 蓮はそう言うとあたしを好きになった時のこと、今までの恋愛のことを話してくれた。
 「ほんとに嬉しかったよ。霞がさくらの生まれ変わりだってわかった時は。これで前世の蓮にも、さくらにも後ろめたい気持ちにならないで霞を愛せるって思った。俺はずっとさくらしか愛しちゃいけないって思ってたから。」
 「じゃ、蓮はあたしがさくらの生まれ変わりだって知る前からあたしのこと…?」
 「そうだよ。霞を一目みた瞬間から恋に落ちてたんだ。」
 知らなかった。蓮はあたしを、水城霞を好きになってくれてたんだ…。
 「れ…ん…。」
 「霞、もう泣かないで。そんなに自分を責めることないんだから。」
 「ち、ちが…。嬉しいんだもん。あたしを好きになってくれて…。」
 「俺も霞も前世に縛られすぎだよな。そんなんじゃさくらと蓮に申し訳ないよ。これからはさ、前世に…過去にとらわれないで今と、未来を大切にしようよ。な?」
 蓮の言葉が胸に響く。
 あたしたちの“今”と“未来”を大切に…。蓮の描く未来にあたしもちゃんといるんだ、と思うと嬉しくてたまらなかった。前よりも、もっともっと蓮が愛しく感じる。今日も明日も、1年後も10年後も、蓮のそばにいたい…。
 「ところでさ、もうすぐクリスマスだろ?受験勉強は休みにしてさ、一緒にゆっくりしようよ。どっか行きたいとこある?」
 あ…。あたしはすっかり頭になかったクリスマス。蓮はちゃんと考えてくれてたんだ。
 「うーん、じゃあさ、蓮のお家に行きたい。だめ?」
 「家?そういえば霞、家来たことないよな。いいけど…、そんなんでいいの?どっかおいしいもの食べにとか行かなくていいの?」
 「いいの。蓮がいればそれだけで…。」
 「よし。わかった。じゃ、24日にいつもの駅まで迎えにいくから。」
 「うん。あたしご飯作るから買い物してるね。」
 菜月と必死に考えたクリスマスプレゼント。それは蓮にご飯とケーキを作ること。あたしは料理が得意だった。親が共働きだったから、いつの頃からか夕飯はあたしが作ることが多くなってた。
 蓮は一人暮らしだからご飯を作ったら絶対に喜ぶと、菜月からのアドバイスだった。
 「ほんとに!?すごい嬉しいんだけどっ!いつもろくなもの食べてないからなぁ。楽しみにしてるよ。」
 24日。クリスマスイブ。
 今年はいつもよりもわくわくする。蓮と一緒に過ごせるから。恋人たちのクリスマスイブ。今のあたしたちにぴったりの言葉だわ。
 あたしは待ち合わせの30分前に駅に着き、駅前のスーパーで買い物をした。
 なんか、いいなぁ。好きな人のご飯を作るための買い物って。どきどきしちゃうな。
 今日作る予定なのはビーフシチュー。買い物を済ませると駅のロータリーで蓮を待った。待ち合わせの17時ぴったりに蓮は来た。
 蓮の車であたしたちは蓮の家に向かった。
 「ここが俺の家。狭いけど…。」
 3階建てのこじんまりとしたアパート。蓮の部屋は2階。部屋に入るとタバコの匂いがする。
 「おじゃましまーす。」
 ワンルームの綺麗に片付いた部屋。ここで蓮はいつも生活してるのかぁ。


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