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真田拾誘翅(さなだじゅうゆうし)
【歴史物 官能小説】

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拾弐-3

 半刻後、睦の身体を堪能し、狭い膣に大量の精液をぶちまけた忠直は、満足の体(てい)で睦の寝物語に耳を傾けた。そして、彼の口から次のような言葉が出た。

「なあに、隣の井伊直孝など物の数ではない。わしは家康公の孫だぞ。戦端が開かれたなら真っ先に敵に突進し堂々と手柄を上げて見せるわい」

 松平忠直が名前を挙げた「隣の井伊」のもとには早喜が向かっていた。気の進まぬ勤めではあったが『これも幸村様の戦勝の一助』と思い、割り切って城を出た早喜であった。拾誘翅の中で最も身軽な彼女は、戦支度の兵の間を素早く移動し、見張りの兵がよそ見しているあいだに井伊直孝の幔幕にするりと入り込んだ。そして言う。

「流れの歌妓(かぎ)でございます。戦の前に唄など如何(いかが)でござりましょう」

不審な女の出現に直孝は床几に腰を降ろしたまま無言で睨みつけたが、「まずは一曲」と、かまわずに唄い始めた早喜の美声に目を見張った。清涼でありながら底深くもある節回し。俗謡なれども典雅な唄に、思わず聞き惚れた。

「……良き声じゃの」

硬い表情は変えぬものの、直孝が興味を示したので早喜は別な唄を披露した。

「……善き唄であった」

施しを与えようとする直孝を押しとどめ、早喜は片膝を付いた。

「おあしを頂こうとは思いません。明日には始まろうかという戦に臨む武士(もののふ)のお慰みになればと存じ、こうして戦場を渡り歩いております」

「……殊勝であるな」

「井伊直孝様は苛烈な戦をなさる方と聞き及びました。左様な御仁は危険な目にも遭いやすいことでしょう。悪くすれば命を落とすことにもなりかねませぬ」

「……不吉な物言いじゃの」

「巫女とまぐわうは厄払いになると申します。この身は巫女にはあらねども、歩き巫女と境遇は似ておりまする。わたくしとまぐわい、厄落としをいたしませぬか?」

「……巫女とまぐわうは厄払いになる。……初耳じゃな」

直孝はジロリと見据えた。早喜も初耳であったが、これは千夜から授けられた科白(せりふ)であった。

「歌妓では嫌でございますか?」

直孝は答えず、また早喜を恐い顔で見据え、黙考した。強い眼力に晒され、自分の正体がばれるのではないかと危惧した早喜ではあったが、次の言葉で身体の力を抜いた。

「よかろう。あれほどの唄を聞かせる者は巫女に通ずる何かがあろう」

仏頂面のまま立ち上がり、直孝は夜更けてからまた来るようにと早喜に告げた。


 井伊直孝の陣は夜のとばりに包まれたが、あちこちに篝が焚かれ、けっこう明るかった。が、野営の折にしつらえられた直孝の寝床は四囲を幔幕に覆われて仄暗かった。
 その暗がりに早喜の裸体が浮かび上がる。
 余計な肉は付いておらず、ばねのありそうな肢体であった。しかし、肌は滑らかで、指を軽く沈ませると程よき柔らかさを感じることが出来た。
 直孝が早喜の首筋に唇を押しつけると、彼女はその容貌にふさわしい可憐な声を上げた。
 乳首を口に含むと身を固くし、陰核に指を当てると腰を引いた。

『うぶなおなごを演じておるのか?』

直孝はいぶかったが、早喜の反応は素であった。今まで何人もの男と同衾したが、いつまでたっても反応は硬かった。こんな娘は傀儡女にしては珍しく、地女であっても男遍歴を重ねれば、練れた態度を滲ませるのが普通だった。
 しかし、この「硬さ」を好む男がけっこういた。いや、早喜の場合、硬いだけではなく、愛撫を受けると思わず控えめな嬌声を上げるのだが、その控えめさが男心をくすぐるようだった。
 直孝も早喜の身体に触れているうちに、その深妙な反応に興をそそられ、無愛想な鼻の下がほんのわずかだが伸びてきていた。
 そして、交合に及ぶと、女陰の妙(たえ)なる窄(すぼ)まりに直孝は瞠目した。その味良き秘陰に魔羅で百連突きを見舞ってやると、早喜の花のような容(かんばせ)に朱が刷かれ、さらに突きを繰り出すと麗しいひたいに玉の汗を浮かべ、精を漏らしそうになる締め付けを堪えて子壺の入り口を攻めれば、声は秘めやかなれども腰うち震わせ、早喜は性愛の頂点に軽く登り詰めた。その後、さらなる攻めの果てに直孝が吐精すると、早喜は激しく身体をうち震わせた。
 その一部始終が直孝には新鮮であった。何よりも彼の心を動かしたのは、深く逝った後、早喜の顔に浮かんだ仄かな笑顔であった。男は、一旦精を漏らしてしまえば女への興味は急に薄れるものだが、早喜の仄かなで自然な笑顔は、直孝を春の日だまりにいるような心地にさせた。

 事が終わり、身なりをつくろい終えた早喜は「ご武運を……」とだけ言って直孝の陣営を後にした。
 沙笑や睦のように寝物語に功名心を煽るような物言いはしなかったが、早喜の短い言葉だけで、直孝は奮起し、戦が始まった折には比類なき武者働きをせんと心に誓ったのであった。


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