慰めあう女-1
松元寿伯邸の炎上から二月ほどが経った。
あの日、燃えさかる寿伯の屋敷に飛び込んだ秋山親子だったが、椿を探し回るうちに炎の勢いはさらに激しくなり、結局救い出すことは叶わなかった。
断腸の思いで脱出した親子は奉行所から駆けつけた捕方の役人から同行を求められた。
そして南町奉行・大岡忠成によって直々の取り調べを受け、
(老中・沼田様の娘御を救うためだったとはいえ、あまり危険な真似はせぬように…)
と、きつく申し渡された上で、翌朝解放されたのであった。
一味の首謀者である松元寿伯はどうなったであろうか…?
秋山親子と豆岩の殴り込みに驚いた寿伯は屋敷の中に駆け戻り、隠し部屋に置いてある宝物を物色しているうちに煙に巻かれて焼死していた。
女たちをさんざんに犯し、弄び、そして殺した鬼畜に相ふさわしい最期であった。
その片手にはしっかり唐渡りの高価な壷を抱えており、黒焦げの壺を開けてみると、中から切り取られた女の陰核、乳首、花弁の焼酎漬けが大量に出てきた。
中にはこの物語の冒頭で命を落としたお小夜のものもあったに違いない。
寿伯に女を提供し続けた相州屋宗右衛門はこの事件がきっかけで捕縛された。
宗右衛門は取調べ中に獄中で謎の病死。相州屋はお取り潰しとなったが、結局抜け荷一味の全貌が詳らかにされることはなかった。
大奥や宮中、薩摩藩まで抱き込んだ大規模な密貿易は、徳川幕府の土台を根底から揺り動かしかねないものだった。
内偵を進めていた公儀は恐れをなし、宗右衛門を獄中死させて真相を闇から闇へと葬ったのである。
これでは弦斎の槍に股座を刺し貫かれて息絶えた生駒の静音も浮かばれまい。
男女交合の悦びも知らぬ清い身体で己の使命に生き、そして死んだ静音。
筆者も彼女の御霊が成仏できることを願ってやまない。
無惨にも女の隠しどころを矢で射られたお京は、豆岩によって藤兵衛の親友である蘭方医・大川了順の許に担ぎ込まれた。
「こ…これは酷い…!」
お京の血まみれの局部を見て大川了順が呟いた第一声はそれであった。
弟子に指示してお京の手足をしっかりと縛ると、鏃の突き刺さる膣口がよく見えるように両脚を開かせ、痔の手術の形に固定した。
要するに女にとって恥辱に満ちた『マングリ返し』である。
もしお京に意識があったら羞恥に涙したかもしれない。
若い弟子たちにとっても刺激の強すぎる格好ではあったが、生命の危機にある女を救うためには致し方ない。
了順はお京の口に麻酔薬の染み込んだ布をかぶせて意識が戻らないようにし、裂けた女陰と肛門に何度も焼酎を吹きかけて消毒洗浄した。
次に何本もの鉗子で膣口を鋏み出して極限まで押し広げ、メスで膣壁を切開して鏃を取り出して傷口を縫い合わせ、同時に十手を突っ込まれて著しく傷ついた子宮頸部も処置するという大手術を行った。
奇しくも同時刻、地下蔵に監禁された椿がまったく同じ格好で張形責めにされて悶え狂っていた事を考えると、奇妙な巡り合わせであった。
笹原椿は、屋敷が鎮火した翌日の午後に救い出された。
瓦礫の中から地下蔵への入口が発見され、中からうっすらと人の声が聞こえる。
役人たちが錠前を壊して地下蔵に降りてみると、そこには異常な光景が広がっていた…。
中にたちこめる匂いに思わず顔をしかめる役人たち。
精水と淫蜜が混じりあった生臭さ。尿のアンモニアと糞の悪臭が加わり、強烈な異臭を発している。
その悪臭の中で、マングリ返しで柱に括られた椿がひたすら悶え啼き狂っていた。
股間には二つの巨大な張形が突き刺さっており、肉芽を何本もの鍼で串刺しにされている。
「む"う"う"う"う"〜〜〜っっ!!! む"あ"あ"っっ!!! ん"ぐぐっ…ん"ごぉっっ!!」
血と精水と淫蜜と糞尿にまみれ、猿轡を嵌められたまま意味不明の叫び声を上げ、狂い続ける椿。
股間の痛みも何処かに忘れ、阿片の快楽に酔いしれているのは明らかだった。
南町奉行所の与力・平田作次郎は、その変わり果てた姿に一瞬、言葉を失った。
「沼田様の御息女が存命であったことは不幸中の幸いだったが…。これでは…もはや…」
配下の同心も、小者も、誰一人としてその言葉の後を続ける者はいない。
「ともあれ、早く御息女をお助けせよ!」
「ははっ!!」
小者がまず椿の猿轡を解き、次に身体の縛めも解こうとした時。
平田が小者を止めた。
「待てっ! まず、御息女の隠しどころに刺さったままの張形と鍼を抜いて差し上げろ」
「はっ!!」
…つぷっ。…つぷっ。一人が慎重に鍼を一本一本抜き取っていく。
血まみれの肉芽はすっかり化膿しており、パンパンに腫れ上がって親指ほどの大きさになっていた。
最後の鍼を抜き取ると、血膿を滴らせたまま肉豆は萎びてゆく。
残る二人が前後の穴にぶち込まれた張形をゆっくりと引き出そうとした。
…が、抜けない。
弦斎は膣や肛門が裂けるのもかまわず、力任せに無理やり押し込んでいる。
限界まで広がり切った穴の周囲で血が固まってしまったのだ。
「くっ、くそっ! 抜けねぇ!!」
焦る小者たちは両腕で張形をしっかりと掴み、力任せに思い切り引き抜いていた。
ずるずるずる…っ。
ぼこんっ!! ぼこんっ!!
二本の張形が完全に抜き取られた瞬間。
大きなカリと張形に刻まれた複雑な溝とで内蔵をぐちゃぐちゃに掻き回されて、椿は盛大に逝った。
「ん"あ"あ"あ"あ"あ"あ"〜〜〜〜〜〜っっ!!!」
二つの穴ぼこから小便混じりの潮と腸液を噴出しながら、である。
ぶしゃああああっ!!!
小者たちはそれをもろにかぶった。