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珍客商売〜堕ちた女武芸者〜
【歴史物 官能小説】

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秋山親子の奮戦-6

「フフフ。爺にそんなコト出来るアルか? 来なければこっちから行くアルよ!!」
 陳は不敵な笑みを浮かべつつ、ヌンチャクを振り上げたその時であった。
 突然、藤兵衛の構えが変わった。
 なんと左手で刀を逆手に持ち、刀身を垂直に地面へと向けたのである。
「…何っ!!」
 これには陳もいささか驚いた。
 日本に来てからこれまで何人かの侍と戦ってことごとく倒してきたが、このように奇妙な構えは見たことがなかった。
 侍が刀を逆手に持って戦うなど通常はありえないことだ。
 第一、片手でしかも逆手では腕に力が入らず、相手を斬ることなど無理だ。
 TV時代劇の世界ではよく見かけるポーズだが、あれは画面にインパクトを出すためにプロデューサーが考え出した創作なのである。
「どうじゃ? 少しは驚いたか支那人よ。早うかかってこんか!!」
 藤兵衛の鋭い一喝に陳は思わず気圧された。
「うう…。所詮ハッタリね! そんな構えで斬れるワケないアルよ!!」
 陳がヌンチャクを振り回しながら突進した。
「アチョ〜!!!」
 ブン! ブン! ブン! ブン!
 次々と繰り出す陳の攻撃。
 しかし藤兵衛はどれも紙一重で避け、相手の懐に飛び込んだ。
「!!!!」
「秘剣・流れ星!!!」
 その刹那、藤兵衛は刀を離した。刀はそのまま地面に向かって落下してゆく。
 それを右手で持ち帰ると身を屈めて構え直した。
 左にすり抜けた藤兵衛は陳の胴をなぎ払っていた。
 ドシュッ!!!
「そ、そんなバカな…。このワタシが負ける…なんて…嘘アル…よ…」
 まるで信じられないといった表情を浮かべながら陳は地面にどうと倒れ伏した。

「父上!!」
「大二郎、早く屋敷に行け!! 椿ちゃんを探すのじゃ!!」
 父親の勝利に喜び、駆け寄ろうとする大二郎を制して藤兵衛が叫んだ。
 しかし、その時。
 大きく燃え始めた屋敷の中から一人の浪人が姿を現した。
 言うまでもなく大槍を手にした山鹿弦斎である。
「むっ!!」
「まだ俺が残っているぞ。お前たちを屋敷には一歩も入れん!! むんっ!!」
 弦斎は槍をぐるりと回し、大二郎に向かってピタリと穂先を向けた。
 その所作を見て藤兵衛は
(こやつ…。できるわい。腕前はあの支那人以上か…?)
 …と、戦慄した。
「大二郎、気をつけい!! こやつ、只者ではないぞ!!」
「どけっ!! どかぬと斬るぞ!! お前、椿殿を何処へやった!!」
 藤兵衛の忠告に耳も貸さず、怒りに顔を歪めて大二郎が怒鳴った。
「ふふふ…。爺、わかるか? それよりもお前…。あの女に惚れておるのか?!」
「…なっ! 何を言う!! 椿殿は、私の剣友で…」
 赤面した大二郎が言いよどむと、弦斎はにやりと笑った。
「くっくっく…。そうか、惚れておるのか…。そいつは残念だったなぁ…。あの女の新鉢を割った(処女を奪った)のは、この俺様よ!!!」
「何だとォォォォォ!!!!! よくも!! よくも椿殿をっ!!!!!」
「あっ、馬鹿!! よせ!! よすんじゃ!!」
 藤兵衛は止めたが、遅かった。
 怒り心頭に発した大二郎が思わず斬りかかる。
 これはもちろん相手を動揺させて隙を作ろうという弦斎の作戦である。
「うおりゃあああっ!!」
 心理作戦に引っかかった大二郎を弦斎の槍が襲った。
 しゅっ! しゅっ! しゅっ!
 弦斎の繰り出す鋭い矢の穂先。
 大二郎は最初の数回は刀で弾いたものの、あまりの素早さに受けきれなくなり、左肩を槍がかすめた。
「うおっ!!」
 よろけた大二郎が後ろにどっと倒れる。
「くらえいっ!!」
 弦斎がとどめの一撃を打ち込もうとした、その時であった。
 びしっ!!
「むうっ!!」
 顔面を押さえてしゃがみ込む弦斎。その額から血が滴り落ちる。
 藤兵衛が拾い上げた小石を礫として打ち込んだのだ。
 その隙に藤兵衛は大二郎の元に駆け寄っている。
「爺…。なかなかやりおるな…」
 藤兵衛を手強しと見た弦斎は、再び大二郎を動揺させる手に出ることにした。
「おい、お前! あの女はなかなかに良いぼぼじゃったぞ! 剣術で鍛えておると締まりも違うわい! もっとも、仲間内でさんざんに犯したゆえ、穴も大分緩くなったがの!!」
「おのれ〜っ!! 許さんっ!! 許さんぞっ!!」
 そう叫んでいきり立つ大二郎を、藤兵衛が後ろから必死で止める。
「はっはっは! あの女は尻の穴もきつくて良い具合でなぁ! 俺は中に尿(いばり)を注ぎ込んでやったわ!!」
「許さん!! 貴様、絶対に殺す!! 殺してやるっ!!」
 大二郎は大粒の涙をこぼしながら、唇を血が出るほど噛み締めていた。
 その凄まじい怒りは藤兵衛の力をもってしても抑えきれず、大二郎の身体は藤兵衛ごとじりじりと前に進み始める。
「お前が仮にあの女を救い出せたとしても、我らが使い古しの腐れぼぼ…いや、もっと汚らしい汚門戸(おもんこ)しか持たぬあの女を嫁にして添い遂げる事が出来るのか? 出来まい!?」
「うお〜〜〜〜っ!!!」
 大二郎の怒りとも悲しみともとれぬ、獣のような咆哮が響いた。
 遂に大二郎の怒りが頂点に達したのだ。
 藤兵衛を弾き飛ばし、弦斎に向かって一直線に突進してゆく。
(むっ!! これはまずい!!)
 尻餅をついた藤兵衛は素早く立ち上がって、大二郎の巨体の後ろにすっぽりと隠れるように走り出した。
(ふふ…。与し易い相手よ。まずはこれで一人…。残った爺は多少手こずるだろうが、何とかなる!)
 心の中でそう計算してほくそ笑んだ弦斎は、素早く槍を構え直した。
「馬鹿め! 飛んで火にいる夏の虫とは貴様のことよ!!」


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