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呪縛の檻
【その他 官能小説】

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消された記憶-8

一行が考え込んでいる間に、昔、絵茉が住んでいた家の近くに辿りついた。絵茉にとって見覚えのある街並みだった。

「絵茉ちゃん、これからあの日と同じルートを辿ってみようと思う。何か思い出したことがあったら言ってくれ。ここから事故のあった崖まではこの道順しかない。」

「はい・・・。」

東条は再び車を走らせた。途中までは絵茉の祖父の家へ向かう大きな通りを走った。しかし、その分かれ道に差し掛かる前、絵茉が思い出したように大きな声を上げる。

「ここっ!このお店・・・覚えています。」

2階建ての大きな総合スーパーだった。

「ここに寄ったのか?」

「はい。たしかトイレに行きたくなったんです。それで母と一緒に行きました。」

「じゃあ、今もそれに倣って行こう。」

東条は車を駐車場に停めた。

「たしか・・・私がトイレに入る前に、祖父の家まで遠いから何かお昼ご飯を買って行くことにするわって、母が言ったと思います。父と弟は車で待っていました。それから母は、私にトイレから出たらその近くのイスに座って待っているようにと言いました。それで私は一人で母を待っていて・・・待っている間・・・?あれ、何かあったような気がします。誰かが私に近づいてきたような・・・?」

「雨宮か?!」

「・・・いえ、男の人ではなかったような。」

トイレ傍のベンチで絵茉が考え込んでいると、突然女の子の叫び声が聞こえた。

「やだーーーーっ!!あのぬいぐるみ買ってよ、ママのばかぁーーー!」

絵茉はハッとしたように、記憶を取り戻す。

「ぬいぐるみ・・・?ぬいぐるみ・・茶色い。茶色いぬいぐるみ、そうだわ!熊だ!思い出した!!知らない女の人が突然、私にクマのぬいぐるみをくれたんです!淡々とした表情で、まるで感情がない人形みたいな女の人でした。

 そしてそのぬいぐるみを受け取ったら私、突然遊園地にいかなくちゃって思ったんです。それで私は騒ぎ出したんです。
そうしたら騒ぎを聞きつけた母が戻ってきて、私をすぐに父の所に連れて行きました。私があまりにも遊園地って叫ぶものだから、弟も遊園地にいけるものだと思って・・・

 困った両親は、祖父の所へ行ったら娯楽はほとんどないから、最後にメリーゴーランドだけでも乗らせてあげようかと話し合って、遊園地に向かうことにしたんです。でも今思うと、なんであんなに遊園地に行きたくなったのか、全く覚えていません。
そしてそのぬいぐるみも私の手の中にずっとあったという記憶はありません。車に乗った時にはもう持っていなかったと思います。」

「そうか、絵茉ちゃんは昔っからおしとやかな感じだったもんな。そんな子に叫ばれちゃあ、先輩たちも可哀想になって連れて行ってやるかって思ったんだな。
でも、女がクマのぬいぐるみを渡しただけで、遊園地に行きたくなるって言うのもおかしな話だな。これは絵茉ちゃんが連れ去られた事と関係がありそうだな。
催眠術・・・とかか?」

東条たちは再び車へ戻り、遊園地までの道のりを走り出し、絵茉の両親と弟が亡くなった崖の麓までやって来た。この峠を越えれば遊園地に辿りつくはずだった。


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