消された記憶-6
二人が登山口に辿りつくと、小さな駐車場に軽自動車が一台停まっていた。そしてその傍にはぽつんと一人の男が立っていた。男は驚いたように秀慈に話しかける。
「秀慈くん?!こんなに早くに絵茉ちゃんを連れて来れたのか?」
「絵茉から僕の所に来てくれたんだ。」
「絵茉ちゃん!こんなに大きくなって・・・おじさんを覚えているかい?君のお父さんの友達で、最後に会ったのはお父さんたちの葬儀の時だから5年前かな・・・。」
絵茉は記憶の糸を辿り始めると、ぱっと閃いた。まだ幸せだった頃、よく家に遊びに来てくれた陽気なおじさんだ、と思い出す。
「東条さん・・・。」
「覚えていてくれたんだね、でも思い出話は後だ。今は急いでここから離れるよ!乗って!!」
東条は秀慈と絵茉を車に乗せると、急いで登山口を後にした。