動き始める運命-3
時刻が23時10分になった時、いきなり部屋のキイっとドアが静かに開くと、絵茉と秀慈はドアの方を一斉に振り向いた。ドアの前にいたのはイラついた様子の一馬だった。
「あれ父さん、どうしたの?」
一馬が息子の姿を認めると、いつもの優しい顔つきに戻る。
「秀慈?こんな時間まで二人で何の話をしていたんだい?」
「生徒会で新聞を発行するんだけど、絵茉は字が上手だから手伝ってもらおうと思っていたんだ。ね?絵茉。」
秀慈は絵茉を方を見た。彼女は俯いて小さく返事をした。
「はい。」
「そうか、それはいいことだね。でも二人とも、明日も学校があるのだから早めに寝なさい。」
「わかっているよ、父さん。でもあと5分だけ!」
「5分か・・・そうか。じゃあおやすみ。」
そう言って一馬は再び静かに扉を閉めた。秀慈は絵茉に不思議そうに尋ねる。
「父さん絵茉に何か用だったのかな?」
「・・・わかりません。」
絵茉は本当の事が言えるわけなく、そう答えるしかなかった。
秀慈は宣言した通りに5分後に部屋に戻って行くと、絵茉は急いで地下室へと向かった。いつものように誰にも気がつかれないように2階の使われていない物置部屋へ向かう。そこから地下室に辿りつく扉があるのだ。絵茉は駆け足で地下室へたどり着いた。
この時、絵茉はまさか秀慈がその様子を見ていたとは全く気がつかないでいた。