動き始める運命-13
二人のただならぬ張りつめた様子に、彼女は目を見張った。
「雨宮君?」
秀慈はパッと絵茉の手を離した。保険医は考え込むように手を口元に当てて言った。
「それで五十嵐さんは悩んでいたのね・・・。私は恋愛相談には乗れないけど眠れなくなるまで悩むのなら、早くご両親に相談なさいね。」
彼女は絵茉と秀慈が報われない恋愛をしていると思い込んでしまったようだった。
「そうそう五十嵐さん、おうちに電話したら雨宮君のお父様がちょうどいらして、迎えに来てくれるらしいわよ。鞄もとってきてあげたから、ここで横になって待っていなさい。雨宮君ももう教室なり食堂に戻りなさい。お昼ご飯食べ損ねちゃうわよ。」
秀慈は父が絵茉を迎えに来ると聞いて、いてもたってもいられなくなったが、今は何もできない。絵茉に小声で『僕を信じて』と言い残し後ろ髪を引かれる思いで彼は保健室を後にした。
絵茉は心臓がきゅうっと鷲掴みされるように締め付けられるのを感じた。