動き始める運命-12
絵茉は困惑の表情で秀慈の横顔をチラッと見た。
「絵茉・・・ごめん!!」
「どうして謝るんですか?」
「・・・僕は知っているんだ。君と父さんがしている事・・・。昨日だって父さんが絵茉に無理な事させたんだろう?僕はこんなことをしている父さんを許さない・・・。」
絵茉の心臓がドキリと大きな音をたて、顔色がますます青ざめていった。すでに秀慈の顔を見れず俯くしかなかった。
「でも、僕が助けてあげる!僕が君を守るから。僕を信じて・・・。」
秀慈はギュッと力強く絵茉をもう一度抱きしめた後その腕を静かに離すと、絵茉はゆっくりと顔を上げて秀慈を見つめた。自分をこの闇の世界から救ってくれると言ってくれた王子の出現と共に、絵茉の心はざわめく。どうやって一馬との関係を終わらせてくれるつもりなのだろうか。そんなことは不可能に近い。
一馬は表向き品行方正の紳士だ。彼が鬼畜な男だと言ったって、誰も信じてくれやしないだろう。しかも血がつながっている実の父親に、一体何ができると言うのだろう・・・。自分をかばって秀慈がひどい目に遭ってしまったらと考えるだけで、心苦しくなる。絵茉がそう考えていると、ぽとりと一粒の涙が彼女の頬を伝った。
「―――やめてください・・・。」
「え?」
「私はこのままで構いません。」
「何を言っているんだい、絵茉?!そんなのおかしいよ!!」
「秀慈さんの身にも何が起こるか・・・。」
「僕の事を心配してくれているの?」
絵茉は小さく頷いた。
「僕は大丈夫、絵茉が助かる方法考えるから・・・。」
秀慈はぎゅっと絵茉の両手を握った時、保健室の扉がガラリと開いた。保険医が戻ってきたのだ。