崩落-5
その部屋は少し扉が開いていて、中の様子が見えた。こんな夜更けに誰が何をしているんだろう・・・。そう思いながら秀慈はこっそりと扉を覗く。すると中にいたのは下着姿の絵茉と一馬だったのだ。秀慈は震える手で必死に口を押さえて、叫び出そうとする声を押し殺した。二人の会話が聞こえてくる。
「私は怒ってはいないんだよ、絵茉。どうして遅れたのか聞いているんだよ?」
「・・・書道をしていました。」
「毎週木曜日23時はこの部屋で私を待っていなさいと言っているだろう?」
「はい。」
「何で今日に限って書道なんかしていたんだ?」
「書道の顧問の先生に、他の部員にも見本を書いて欲しいって言われて・・・。」
「――顧問の名前は?」
「武田先生です。」
「・・・そうか、わかった。」
「どうするつもりですか?」
「いいんだよ、絵茉は何も心配しなくて。君は私にさえ従っていればいいんだよ。さあ、始めようか。今日は待たされた分、君にお仕置きしなくちゃね。」
二人の会話が途切れると、次には絵茉の切なく甘い声が聞こえてきた。
秀慈が聞いたこともない、淫らで美しい喘ぎ声が・・・。父が後ろから下着姿のままの絵茉の身体を何やら撫でているところまでは、秀慈は覚えていた。その後どうやって自分の部屋に戻ったのか記憶が曖昧なまま、秀慈は朝を迎えた。