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悦びの種
【熟女/人妻 官能小説】

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第12話 交差する果てに-3

「まさか、僕もここまで深刻にお考えであったとは思いも寄りませんでした。それを、僕の軽率な行動が全て台無しに・・・・・・。本当に、お詫びの言葉も思い浮かびません。ただ、校長に対する感情だけは、どうしても嘘を付けません。このまま続けるには不可能にしろ、一つだけ校長の僕に対する気持ちに触れたい事があります。それは契約セックスにおいて、なぜ僕を相手にお選びになられたのか?」

「そ・・それは・・・何度も申し上げてる通りに、教頭の件において、木本先生はお若いですから、私の様な年増に興味を示さないと思っておりました。ただ、今回は予想だにもしない事にみまわれまして、この様な事態になりました」

心なしか、校長はたじろぐ様子を見せながら、言葉を返した。
僕は、その確信に迫るように続けた。

「ええ・・・それは、本当に申し訳ないと思っております。ただ一つ気がかりなのは、校長が若い教師を選択する理由は十分存じましたが、数居る若い教師の中で、なぜ僕を指名なされたのか、それを伺いたいんです。たまたまなのか、それとも何か理由があるのか、明白に答えて頂きたいのです。そもそも、先ほどの理屈でしたら、リスクは大きいかもしれませんが、既婚の若い教師でも構わないはずなんです。その辺を、なるべく誤魔化しの無い言葉でお願いしたいのです」

「そ・・それは・・・・・」

やはり、確信を付かれたからだろう、あからさまにたじろぐ校長は言葉を失い、窓の外を眺める様に考え込んでいた。
その校長の視線の先を追えば、窓の景色からは夕闇は消え、月明かりだけで室内は照らされていた。
窓の外を眺める校長の表情を伺えば、月明かりで照らされて光る涙が、薄らと瞳から浮かんで見えた。
今まで泣いた涙跡なのか、それとも僕の投げかけた疑問に対して物思いに深ける感情からなのか、それは定かでは無かった。
しばらく沈黙は続いたが、校長は立ち上がると、なぜか全ての窓のカーテンを閉めた。
そのまま入り口の方に向かうと、電気のスイッチを入れ、明かりを点けた。

「校長、この時間に大丈夫ですか?。人影を、他の誰かに見られたら怪しまれるのでは?」

この時、礼法室の壁に掛けられた時計は、7時を過ぎようとしていた。

「心配しないでください。以前にもお話した通りに、この場は若い教師を対象にした教育実習の一環として、学校側全体に伝えておりますので、誰にも怪しまれる事はありません。昨日の島崎先生の時には、今の時間よりも大分経ちましたからね」

校長はそう言いながら、再び元の様に戻り、僕の前で正座の姿勢で座った。
外されたブラウスのボタンも整え、今度は何かを身構える様に、きちんと正された正座の姿勢だった。
今までは、窓に照らされた明かりだけで、校長の表情を伺っていたが、明るい蛍光灯から映し出されたその姿は、化粧崩れも重なり、紛れもない疲れきった表情の五十路の女にしか見えなかった。
本来なら、若い僕からして見れば、幻滅しかねない衝動に駆られる姿だが、校長を病的にも愛しく想う僕の気持は、哀愁さえも感じ取っていた。

ちなみに、校長の言葉から出てきた島崎と言う教師は、僕と同期の女の教師で、理論派でも知られていた。
例え、この場を設ける為のカモフラージュと言えども、夜遅くにまで偽装の研修を執り行う校長の執念には、子供を授かる為の契約セックスにおける、熱い意気込みが感じ取られた。
だが、僕の屈折して想いが、その熱い意気込みを踏みにじる形で、終演を迎えようとしていた。
それでも、校長の僕に対する想いは、今まで踏みにじってきた事さえも覆すほどの、確信を捉えようとしていた。

「校長・・・・・・」

「そうですね・・・木本先生ばかりが思いの丈を打ち明けて、私だけが真意をひた隠しするのも失礼なお話し・・・・・・。分かりました・・・木本先生をお選びになった理由を、全てお話させて頂きます。ただ、木本先生の私に対する想いに、少々誤解を招くような理由がありますので、その辺を御承知ください」

校長は、僕の話す言葉を感じ取ったのだろう。
それを遮る様に話した。
その表情は、少し穏やかにもなっていたが、なぜか瞳からは涙がこぼれ落ちていた。
これから語る思いは、それだけ深刻なものである事が垣間見れた。

「大丈夫ですか?校長・・・・・・」

「ええ・・・私の方は気になさらないでください。まずは、木本先生を選んだ理由を率直にお話させて下さい。まるで子供の様で、大変お恥ずかしいお話なのですが・・・・・・木本先生の面影が、私が初めて好きになった人と似ているのです。先ほど木本先生が言われた、とてつもなく好きになった人・・・・・・」

「そ・・それでは?」

僕は驚きの表情を隠せないでいた。
頑なに、契約セックスの相手として僕を割り切っていたはずだが、好意的な面を校長が伺わせたからだ。
ただ、これから語る校長の口からは、思い掛けない壮絶な過去が明らかになって行くのだった。

「ですから、誤解されぬよう、最後まで聞いて欲しいのです。あれは、私が中学二年の時で、お相手がその時の家庭教師の方でした。初恋のお相手でもあり・・・私の初めてのお相手でもありました。私に、女としての悦びに導いてくれた方・・・・・・・。そして後に・・・私の男女間の拒絶を招く切っ掛けを作った方でもありました」

―つづくー


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