光の第3章【剥かれるマミ】-1
光の第3章【剥かれるマミ】
「はぁ、はぁ、思い知ったか…チンかすのヒモ野郎が…はぁ、はぁ」
ファイナルショットが決まり、緊張の糸を弛めたマミの口から、思わずその言葉が零れた。
マミは、自身の下品なつぶやきに気付き、苦笑いを浮かべた。
(まあ、こんな時くらいはいいわよね)
勝利の余韻が、マミを少しおおらかにした。
とにかく、淫乱な本質を目覚めさせない努力を踏みにじる奴は、赦すことはできない。その思いから出た言葉だったが、それが淫乱な本質が言わせていることには、マミ自身は気付いていなかった。
しかし、そんな勝利の余韻に浸れたのは束の間のことだった。
「なっ…」
マミはその異変に気付き、笑顔が凍りついた。
「そんな…」
宿主のモンスターごとぺニス星人を倒したはずなのに、自分を緊縛する触手の戒める力が、一向に弛む気配がなかった。それどころか、今まで以上に肢体を引く力が強まってきたのだ。
「うそよ…ありえない…」
絶対的自信を持つファイナルショット、それがまともにヒットしたはずなのに…。ウルトラレディであるマミには、この状況が信じられなかった。
追い討ちをかけるように、爆煙が徐々に薄れるとともに、緊縛する触手を伝って、信じたくない声が響いてきた。
【クククッ、ウルトラパワーの体現者にしては、随分と口が悪いな。ところで、今、何かしたのか?】
「ああぁ…」
マミは、目の前の光景に目を見開いて驚愕の声を洩らした。
驚くマミの前に、人体で例えれば、男性器の亀頭の部分を皮で覆った状態、所謂、包茎の状態のぺニス星人の姿が、モンスターの後ろから現れたのだ。
マミは、完全防備態勢のぺニス星人の守備力の高さが、宇宙で随一であるとは知っていた。しかし、それがモンスターの影に隠れていたとしても、自分のファイナルショットの攻撃力を上回るとは、微塵にも思っていなかったのだ。
ましてや、宿主であるモンスターが、ファイナルショットをまともに受けて、生命を維持していたことに、大きな衝撃を受けていた。
しかし、実際のところ、モンスターの寿命が尽きかけていることを、この時のマミには気付く余裕は無かった。
一般的に寄生人の特徴として、共存する宿主を物理的に守るために、その身体的能力を上げることがよくある。
だが、身体能力を上げ過ぎて限界を越えると、宿主の身体に多大なる悪影響を及ぼすことになる。例えば、人体を例に示すと、人類は潜在能力や筋肉の半分も使っていない。仮に筋肉量の100パーセントを使うとすれば、その人体は崩壊する。
だから、共存を望む寄生人は、極端に宿主の能力を上げることは絶対にしない。
しかし、ぺニス星人は宿主のことなど躊躇することはなかった。この時も、モンスターの影に隠れながら、数十年掛かる細胞の代謝を、一瞬の内に再生することを繰り返すことによって、スターフラッシュで焼かれる肉体を、維持させ続けていたのだ。
一瞬で生命の寿命を縮めるこの行為は、宇宙法では禁じられている。尚且つ、普段から使い慣れていないと、精度の維持もできない高度な技のため、習得者は宇宙法を破り続けているということだ。
目を見開いたまま、驚いた表情で固まるマミの前で、ペニス星人が皮の鎧から本体である亀頭部分を覗かせた。
【クククッ、どうした、もう終わりなのか?お前の崇高な意思とはこんなものか。ククク】
ペニス星人の小バカにするようなその言葉で、マミはハッとなった。こんなことでまごまごしている場合ではない。そう気付いたマミの瞳に強い意思が現れた。
(1度でダメなら2度やればいい。それでもダメなら何度でもやるだけよ)