光の第1章【マミの憂鬱】-2
グガアアアアア!
まだまだ、離れているにも関わらず、そのモンスターの咆哮は、【MANCO】が誇る戦闘機【MANCO FIGHTER U】のコクピットの風防ガラスを震わせた。
「こちらは【MANCO FIGHTER U】マミ機、星獣はパワータイプです。このまま攻撃に移ります!(だから何で戦闘機まで、こんな名前つけてんのよ。アソコにファイトしてどうすんのよ!)」
『マミ隊員、気を付けろ!お前はこの前の出撃で、一機ぶっ壊したばかりだからな』
マミの後方を飛ぶ隊長から、いつもの小言が届いた。
「了解!つっても、こんなちゃちな武器じゃ、足留めにもならないつーの」
ある時期から現れるモンスターは大型になり、【MANCO】の所持する武器では歯が立たなくなっていた。
『マミ隊員、聞こえてるぞ』
「独り言でーす。マミ、イきまーす」
マミはそう叫ぶと、モンスターの鼻先に機首を向けた。
『おい待て!マミ隊員!』
「あっと、メーデーメーデー、こちらマミ機、操縦不能!」
マミは機首をモンスターに固定しながら、機内マイクに向かって叫んだ。
『バカ!そんなに毎回毎回操縦不能になるか!機首を引けー!』
(うっせー、エロオヤジが!こんなエッチな名前の戦闘機なんて、片っ端からぶっ潰してやる!)
マミはある理由から、自分の純情を踏みにじる者が赦せないのだ。
いつも電話対応に聞き耳を立てながら、ニヤニヤと好色な笑みを浮かべる隊長の顔が脳裏を過り、マミはブルッと身震いした。昨日は特に酷かった。
『おいおい、もっと大きな声を出さないと、相手に聞こえないだろ。そうだ、モニターにソコを見せながらコールに出たらどうだ。それならマミ隊員の声が聞こえなくても、何処に繋がったかが相手にわかるってもんだろ。丁寧語にして頭に『オ』付けるのを忘れるなよ。ギャハハハ』
(殺す…)
受話器を持つマミの肩が、ワナワナと揺れた。昨日のこの屈辱な言葉は、絶対に赦すことはできない。
(これで昨日の意趣返しができるわ)
そう思ったマミはニヤリと微笑むと、一機100億円は下らない戦闘機をあっさりと捨てることにした。
「イけーーー!」
マミの操縦する戦闘機は、モンスターの顔に突っ込み大爆発を起こした。
『チクショウッ!あいつ、またやりやがった』
木っ端微塵に吹き飛んだ戦闘機を見ながら、隊長が頭を抱えた。
隊長の頭の中は、ほぼ徹夜で書かなければならない始末書のことで一杯で、マミの生死の心配など一切していなかった。
『どうせまた、奇跡的に生きてるんだろうよ』
幾ら戦闘機を壊しても、一向に左遷されることのないマミと、毎回それに目を瞑る上層部を訝しく思いながら、隊長はふて腐れて吐き捨てた。