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プラネタリウム
【ラブコメ 官能小説】

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M-1

朝起きた時、隣には湊がいた。
冷静に昨日のことを思い出す。
とんでもないことをした。
それは分かってる。
でも、淡いピンクのような純粋な気持ちが溢れ出して止まらなかったんだ。
きっと、楽しい時間を大好きな場所で過ごしてきたからだったんだと思う。
あと5回のライブを迎えるにあたって、大介を複雑な気持ちにしてしまったかもしれない。
それでもきっと大介は大介だから、いつも通りなんだろうな…。
そんなことを考えながら無意識に脇に挟んでいた体温計を見る。

37.8℃

しつこい風邪だ。
陽向は準備を済ませ、解熱剤を飲んだ後フラフラしながら病院へ向かった。

お昼の報告の時、高橋に「風間?大丈夫?ボーッとしてるしなんか変だよ?」と言われて焦った。
「え、え?そーですか?そんなことないですよー!」
「熱あんじゃない?ちょっと…」
高橋に腕を掴まれる。
「え、めっちゃ身体熱いんですけど」
「あたし暑がりなんで。病棟まだ冷房に切り替わってないじゃないですか。ナースコールも多かったし、今すっごく暑いんです。夏って苦手なんですよね〜」
「あ、そう…」
「ハイ」
「具合悪いんだったら言ってね?」
「大丈夫です!めちゃめちゃ元気なんで」
ハラハラした。
風邪だとも熱があるとも言いたくない。
そして、週末はほぼ毎回ライブしてることも遠征に行ってることも、誰にも言っていない。
と、いうか言いたくない。
そんなんで体調崩してるって知られたらやめろって言われるに決まってる。
でも、楓にだけはちゃんと話した。
他の同期は知らない。
なんか、言いづらい。

15時。
そろそろ意識が朦朧としてきた。
悟られまいと目をこじ開けて記録を入れていた。
と、その時。
「風間さん…」
「ん?なに?」
澄田が日勤のペアであることは相当多い。
今日もだ。
やったことのない処置について聞かれる。
「あの…血液培養なんですけど。やったことなくて…」
「見たことは?」
「ないです…」
「そっか。物品は分かる?」
「ハイ!紙見ながら準備します!」
「じゃああたしやるから、準備お願いね」
「ハイ!」
10分後、澄田が持ってきた物品をチェックする。
問題ないのでそのまま患者さんの所に行き、事情を説明する。
90歳のおじいちゃん、細見さんだ。
「そっかぁー…痛いのやだけど、頑張るよ」
「ごめんなさいね。でもこれやったら、悪さしてる菌も分かってすぐに治療に移れますから」
「うん、お願いね。早くお家に帰りたい」
「お家が一番ですもんね」
「そうそう」
かわいいおじいちゃんと話してると癒される。
「すみちゃん、そこに無菌操作で物品全部出しといて」
「はいっ!」
陽向は滅菌された手袋をはめて消毒された腕の血管を探した。
確実にここだ、というのを発見する。
「シリンジに針付けて、キャップ取ってちょうだい」
澄田は丁寧で言われた事は確実に遂行する。
とても優秀だと思う。
だけど、応用力がない。
だから一から丁寧に説明する。
採血するのに集中する。
目の前がぼやける。
分かってたけど、最高に具合が悪い。
でも、こんなことで失敗したら細見さんがただ痛い思いをするだけだ。
陽向は目を凝らして「チクっとしますね」と声を掛けた。
わりと細い血管だったが血圧も高いせいか、上手く引けた。
「ちゃんととれてますよ。多めに取るので少し時間掛かりますけどもう大丈夫です」
「ありがとう!痛くないよ!君はプロだねぇ〜!良かったよ〜」
「あはは、ありがとうございます」
実は、採血や点滴挿入は一番得意だ。
一通り終わった後、細見さんは「ありがとうー!」としわくちゃな笑顔で言ってくれた。
人にありがとうって言ってもらえる職業ってこれしかないのかも、と思う。
仕事をしていると、すごくイラつく患者さんもいるし、こんな風に癒してくれる患者さんもいる。
忙しいから気付かないかもしれないけれど「ありがとう」って言ってくれる患者さんはいっぱいいる。
だから、この仕事が好きだ。
そんな事を思いながら歩く。
多分、かなりフラフラしていたんだろう。
澄田に「大丈夫ですか?」と言われる。
「え、なんで?」
「すっごいフラフラしてたんで…」
「あー……あ、足痛いんだよね」
「え、そーなんですか?大丈夫ですか?」
「へーきへーき!健康サンダルとか履いとけば治るし!」
2人で笑いながらナースステーションに戻る。


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