流れる恋の先にあるもの-2
「今日の夕飯はハンバーグですっ。」
自信満々で台所に立つ。私の得意料理なんだよね。てゆうか、拓人の大好物だから得意になったんだけど。
「ありがとう、美希。」
あぁ、この笑顔弱いなぁ。
「今日バイトどうだった？居酒屋って大変そうだよなぁ。」
まったく、人の心配ばかりして。拓人だってもうすぐテストで大変なんでしょ？
「美希ってば！」
突然拓人が大声を出す。
「どうしたの？」
「いや、さっきから話し掛けてるのに返事しないから…」
「…あぁ。」
思わず苦笑いになる。そういえばさっきから心の声で答えてたわ。
「よそ見しちゃ嫌だよ？」
拓人が甘えた声で言った。
「ごめんね。拓人の事考えてたんだよ。」
私は拓人の頭を撫でてあげる。
「美希…」
拓人がキスをしてきた。…優しく。
「拓人…」
「美希、俺が大学卒業して、就職も見つかったら…一緒に暮らそう？」
「えっ？」
予想外の言葉に驚いた。
「嫌だ？」
不安そうな顔で私を見る。…嫌なわけないじゃない。
「嬉しい。一緒に暮らしたいって思ってた。」
「美希…………愛してるよ。」
拓人は私を優しく抱きしめる。まるで宝物を守ってるみたいに。…あぁ、ここは…拓人の中は、落ち着くなぁ。
「私も……愛してるよ、拓人。」
このままじゃダメだよね。次の日私は拓人にバイトに行くと言って吉井さんの家に向かった。
吉井さんの家には何回か行った事がある。でもこれが最後。私は玄関のチャイムを鳴らした。
「…はい。」
眠そうに出てきた吉井さんに私はいきなり話しを切り出した。
「私、拓人の事が好きです。別れるつもりは一切ありません。」
「…何、いきなり。」
吉井さんはあくびをしながら言う。
今まで寝てたのか？だったら話しをしても頭の中に入らないかも…。でも、今言いたい！
「だから、もう吉井さんとはただの先輩と後輩の仲に戻りたいんです！」
言えた…。自分で何言ってんのか分かんないけど、これが私の本音。
「…ふーん。なんとなく分かった。んで？はい、そうですか…って？」
吉井さんは私を抱きしめるように自分にひきよせた。
「なるわけないでしょ。」
「はっ離して下さい！」
「無理だね。」
「なっ…！」
私の言葉を遮るように吉井さんは強くキスをした。
「もう無理だって分かってるでしょ？俺の事好きなくせに。だからわざわざ家に来たんでしょ？」そう言ってまた、長いキスをしてきた。
…そうよ。無理な事は充分承知。もう過去には…純粋な頃には戻れない。だけどわざわざ来たのはこの口ではっきり言いたかったから。だって、そうしないとまた同じ事繰り返すから。
…でも、結局は…
ふふっ、ホントに長いキス…。でも抵抗できない。そうよ、結局は流れに身をまかせるだけになっちゃうのよ。
「…み…き？」
聞き覚えのある声にはっとした。この声は…
「たく…と…」
私はやっと吉井さんのキスから解放された。
「美希？なっ、何してんの？」
…言葉が出ない。こういう時何を言ったらいいの？
「…拓人、何でいるの？」
やっと出た言葉がコレ。「何でって…吉井先輩に就職活動について…聞こうと…えっ？」
拓人はしばらく私の顔を見て固まっていたが、しばらくして状況を理解したみたいだった。
「そっ…んなんありかよ、美希？そんな裏切られ方って！」
だんだん言い方が強くなる。