それでもあなたに恋をする-21
「この後の事は瑞希も知っているわね?」
美月の言葉に瑞希は頷いた・・・・それは瑞希にとって衝撃的なモノだったという事は顔を見ればわかった・・・・
「どうして僕に・・・・」
瑞希は絞り出すように口にした・・・・
「私はこの事を私だけの秘密にしておくつもりだった・・・・誰にも言う必要なんかないと思っていたから・・・・瑞希が私の子供だと知っても言うつもりなんてなかった・・・・」
「だったら最後まで秘密にしておいてくれよ!」
「そんなわけにはいかないでしょ?瑞希は私と母子ではなくて結婚したいって言ったの・・・・私一人で抱え込む事が出来なかったの・・・・」
「美月さん・・・・」
「瑞希が私と結婚したいって言ってくれた時、正直嬉しくて舞い上がっていた・・・・だから私は瑞希の想いを受け入れた・・・・でも・・・いざ瑞希とひとつになる時に、兄や両親の顔が浮かんできて・・・・怖くなったの・・・・」
「でもそれは仕方ない事じゃ・・・・」
「そうかもしれない・・・・でもそれじゃダメなの・・・・私・・自分で決めたわけじゃなかった・・・・どこかで瑞希の決断に引きずられていた・・・・だから最後に怖くなったの・・・・」
瑞希は黙って美月を見つめていた・・・・
「ねぇ・・・・もう一度考えましょう・・・・今度は期限を決めて・・・・」
「期限?」
「そう・・・・瑞希の卒業式があった日の夜に、お互いにどう決めたのか告白しましょう・・・・時間がかかるかもしれないけど・・・・母子として暮らして行くのか・・・・それとも、さっき瑞希が言ってくれたように結婚して男と女として生きて行くのか・・・・自分が本当にどうしたいのか考えましょう・・・・もしもお互いの答えが一致したらその通りにしましょう・・・・」
「もし違ったら?」
「その時は・・・・別々に暮らしましょう・・・・一人が家族としてみているのに・・・・もう一人は異性として意識している・・・・うまくいくわけないじゃないの・・・・」
「もし決められなかったら?」
「その時も別々に暮らしましょう・・・・半年ほど考えて決められないのなら・・・・どちらも捨てたくないって事よね・・・・と言う事はきっといつか後悔するから・・・・それでいい?」
瑞希は小さく頷いた・・・・
「ゴメンね・・・瑞希に背負いきれない重荷を背負わせて・・・・でもね・・・・瑞希は実の兄と妹の間に出来た子供・・・・そして私は実の兄との子供であるあなたを産んだ罪深い母親なの・・・・その事実は消せないのよ・・・・・」
瑞希は何も言えなかった・・・・ただ美月の申し出を受け入れるしかなかった・・・・
次の日、瑞希が目を覚ますと美月は以前の美月に戻っていた・・・・昨夜の出来事は夢だったのかと思ったが部屋に残されたシーツが昨夜の出来事が現実に起きたという事を物語っていた・・・・瑞希は大学入試に向けての受験勉強に追われてクリスマス等と言ったイベント事とは無縁の生活を送っていた・・・・美月との将来について忘れていたわけじゃなかったが受験勉強を疎かに出来ず、2月が終わろうかというのに結論は出ていなかった・・・・受験結果は、東京の大学と地元の大学に合格した。どちらを選ぶかは美月との結果次第である・・・・正直、瑞希は美月と一緒にいられるならどちらでも良かった・・・・美月が決めたほうに同意しようかとも思った・・・・しかし、美月の事だからそんな事を許してくれないだろう・・・・かと言って決めなければ美月とはどう足掻いても一緒にいられない・・・・瑞希は決断しなければならなかった・・・・美月の事を愛している・・・・その気持ちには変わりない・・・・しかし、瑞希は美月と美月のお兄さんの子供だという事実が重くの
しかかって来た・・・・
(僕と結婚すれば当然僕は美月さんを求める事になるだろう・・・・そうすればきっと美月さんはお兄さんとの事を思い出すだろう・・・・お兄さんにレイプされた事を・・・・だからあの時僕を拒んだのだろう・・・・セックスする事にトラウマを抱えているであろう美月さんの心を僕が癒やしてあげられるのか・・・・それならいっそ母子として暮らしたほうがいいのではないか・・・・)
瑞希の心は揺れに揺れていた・・・・
「明日は卒業式・・・・瑞希はどっちに決めたのだろうか・・・・」
美月の心はすでに決まっていて、それを書いて、封筒に入れて、しっかり封をして鍵がかかる引き出しに入れておいた・・・・美月には迷いがなかった・・・・悩みに悩んだ末の決断だったので、瑞希がどちらを選択しても悔いはなかった・・・・