第10話 目覚める想い-1
ん〜!?・・・ん〜!?・・・・・・
室内は、僕に唇を奪われながらも、必死にもがく校長の声が響いた。
力尽くで僕を引き離そうともするが、校長の両手を上げる様に僕は羽交い絞めに抑えた。
所詮は男の力。
力強く抑え込まれた校長は、もがき抵抗しながらも、僕と口づけを交わすしかなかった。
その間にも、抵抗する校長の衝撃で、寸止め状態の僕の物が果てる前に、僕は校長から抜いた。
そのまま前かがみになると、さらに押さえつける様に口づけを試みた。
およそ一分ほど続いたであろう。
それでも、お互いの唇が重なるだけで、頑なに拒む校長の口の中には、踏み入れる事は出来なかった。
やがて、根が尽きた僕は力を抜き、校長との口づけを止めて顔を離した。
「き・・木本先生どうしてなの!?」
バシッ!・・・・・・
校長の叱咤と同時に、僕の頬には痛みが走っていた。
そのまま振りかざした手で、自分の口元を抑えると、校長は泣き崩れた。
うっ・・うっ・・・・・・
さきほどまでは、もがく校長の声が室内を支配していたが、今となっては悲しみに打ちひしがれる鳴き声が、微かに響いていた。
僕はただ、四つん這いになりながらも、泣き崩れる校長の顔を間近で眺めるしかなかった。
若い僕に気を使い、化粧を濃い目に若作りをしていたが、マスカラなどは涙で黒ずんでいた。
校長は自分の年齢を考え、少しでも女として意識させる為の、僕への気遣いでもあったが、それ以上に、僕の愛欲は予想をも上回り、この様な結果となってしまった。
無論、『悦びの種』の事を語り、校長の気持ちを囃し立てた事を考えれば、今は罪悪感しか残らない。
それでも、先ほどまでに、うごめく校長の肉厚の中でいきり立っていた僕の物は、寸止めのまま悲鳴をあげていた。
どうせなら、あのまま迎えるべきと後悔の念もあった。
所詮は罪悪感などと言っても、愛欲の前ではただの綺麗事にしか過ぎなかった。
このまま四つん這いで、いきり立つ自分の物を露出させる僕の姿はあまりにも卑猥で、とりあえずはズボンとブリーフを一緒に上げて、元の姿に正した。
行為を行う前の様に、その場に正座すると、僕はただうなだれながら時を待つしかなかった。
チラッと校長の方を見れば、両手で顔を塞いで、さらに深い悲しみに覆われて泣いていた。
余程ショックが大きかったのだろう。
相変わらず、僕との行為を行ったままの姿で、脚を広げて仰向けに寝たままだった。
白いブラウスにグレーのタイトスカートをたくし上げて、下半身は局部だけ露出させた黒い透明感溢れるパンティーストッキングだけを履いた破廉恥な姿は、未だにズボンの上からでも分かるくらい膨らんでいきり立つ僕の物を納めさせる事を許さなかった。
僕は罪悪感の中でも、性的意識だけは高まっていた。
ならば、教頭が行ったように、力尽くの行為も可能だった。
例え契約セックスと言えども、その違反行為を、誰に訴える事など出来るようなものでは無かった。
むしろ、一週間前の校長室での異様な雰囲気に呑まれた僕は、その決意をも固めていた。
それらを鈍らせたのは、校長に対して芽生えた、何かしらの想い。
その答えが見つからないまま、刻々と時は過ぎていた。
窓から射していた、オレンジ色もほぼ無くなり、微かな夕闇だけで室内は照らされるようになった。
しばらして、校長のすすり泣く声も収まると、ようやく落ち着きを取り戻したのか、仰向けのままたくし上げられたスカートを元に戻していた。
ポケットからハンカチを取りだし、口元にあてがうと、しばらくしてから立ち上がり、僕が正座する目の前に、ゆっくりと校長は歩み寄ってきた。
そのまま向かい合わせになると、校長も正座の姿勢で座った。
行為に及ぶ前の、静粛な状態に戻ったが、ただ違うのは、お互いが布団の上で正座しているのと、契約セックスでのすれ違った気持ちの空気感だけだった。
僕からは言葉を発する事は出来ずに、正座する両膝を握りしめる様に、ただうなだれてるしか無かった。
校長は横を向いてうつむき加減で、僕と視線を合わそうとはせずに、相変わらず口元をハンカチで覆い隠して涙を流していた。
少し疲れたのか、布団の上に左手を付くと、正座して揃えた脚を横に崩していた。
グレーのタイトスカートから伸びる、透明感溢れる黒いストッキングを履いた綺麗に揃えられた両脚は、未だにいきり立つ僕の物を、さらに漲らせた。
つい今しがたまで、その揃えられた両脚は、僕の物を受け入れる為に、天をかざす様に大きく開脚していた。
その姿を頭に思い描くだけで、ただ未練が募るばかりだった。
もう二度と訪れる事は無い、校長との繋がり・・・・・・それでも、契約セックスと言う形だけで終わる事に後悔するならばと、僕の心を揺るがした。
ただ教頭の様に強引になれないのは、校長を愛おしく思う気持ちが勝っていたのだろう。
そう・・・僕の性癖は、年増の女に目覚めただけでなく、校長に対する母性愛からくる純愛に目覚めた事を、今頃になって知らしめる形となった。
願わくば、真の意味の『悦びの種を』僕は望んでいたのだ。
―つづくー