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【フェチ/マニア 官能小説】

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コレクション-3

 上質そうな革の鞄にパスケースをしまいながら、黒髪ツーブロックの男性がわたしの目の前に現れた。

「ハヤトさん?」
「うん。上にカフェがあるから、暑いし、とりあえずそこに入らない?」
「あ、はい」

 濃いブルーの上品な光沢のあるリネンシャツにブラックのパンツ。細身の身体によく似合っている。

 休日の昼下がりのカフェはカップルや女の子たちで賑わっていた。
 わたしたちもカップルに見えるのかな──なんて思いながら、わたしはアイスコーヒーをひとくち飲んだ。
 冷たい。

「ブラックで飲むんだね」

 同じようにアイスコーヒーをブラックのまま飲みながらハヤトさんが言った。
 わたしはこくりと頷く。ハヤトさんがにっこりと微笑んだ。

「香水、これね」
「ありがとうございます。あの、おいくらでしたか?」
「え? あぁ、いいよ。そのまま受け取って」
「でも……」
「プレゼント。ね?」
「すみません……」
「いいからいいから。思い出の香水なんだって?」

「はい。わたしが小学生の頃、近所に住んでいた優しくて綺麗なお姉さんが使っていた香水なんです。確か大学生くらいだったかな、お姉さん。わたしの弟が大怪我をして入院したときに一度だけお姉さんのおうちに泊めてもらったことがあって、そのときにボトルを見せてもらって。お姉さんのいいにおいの秘密はコレなのかあって思ったのを覚えています。わたしが中学生になる前に引っ越しちゃったんです、お姉さんたち。記憶も曖昧だったんですけど、ずっと探していたんです。この香水を使えば、わたしもお姉さんみたいになれるんじゃないかって──なんかそんなことをずっと思っていたんです」

「憧れてたんだね」

 わたしは少しはにかんで、はいと答えた。

 記憶の中のお姉さんは、今はもうどんな顔をしていたのかハッキリとは思い出せない。
 でも、ほんとうに素敵なお姉さんだった。いつかまた会えたらいいなあ。

 それからわたしたちは1時間ほどお互いのことを話し合った。
 趣味や仕事のことや家族のこと、それから恋愛のこと。

 ハヤトさんは2ヶ月前に彼女と別れたばかりだと言った。振られたんだ、と。

「信じられない。ハヤトさん、とっても素敵な方なのに……」

 つい、うっかり本音が出てしまった。

 ハヤトさんはそんなことないよと否定したけれど、わたしはハヤトさんみたいにマメで優しい上に涼しげな雰囲気の男前を彼以外に知らなかった。


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