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ホントの気持ち
【元彼 官能小説】

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ホントの気持ち-2

「昴、どうしたの…?具合でも悪い?」
「いや、何でも無いんだ…。気にしないで。」
「え、でも…無理しないほうがいいよ?一旦止まろう?」
車がゆっくりと路肩に止まる。
「昴、本当にどうしたの?具合でも悪いんじゃない?大丈夫?」
「…そうかもな…茉莉のせいだ。」
「え…?」
その瞬間、私の体は昴の腕に抱き締められていた。
「…ちょっ…!昴!ど…どうしたのってば、ねぇ!」
「好きだ」
…え?
「好きなんだ、茉莉。高校の時からずっと。ずっとずっと、お前を俺の物にしたかった…。」
「嘘…。」
「嘘じゃない。お前がそんな格好してくるから、…理性持たない。」
そう言って、昴の顔がゆっくりと近づいてきて、私の唇を…。
「…やっ…!」
無意識のうちに、私は顔をそむけていた。
…一瞬の沈黙。
「あ…ごめ…ん…。」
昴が体を離す。
「…ごめん、俺こそ。でも、お前が好きな気持ちは本当なんだ。考えといてくれないか?」
「う、うん…。」
その後の車中は、とっても気まずい雰囲気が流れていて…会場に着くまであたしも昴も一言も話さなかった。
あたしは助手席から外を眺めながら、…柊司の事を考えていた。

「茉莉、遅かったじゃないー!どうかしたの?あ、まさか仲谷くんに襲われたとか?」
周りにいた、元クラスメイト達から笑いが起きる。
「や…やだなぁ美妃ったら!あたしが服決まらなくて遅くなっちゃったんだってばー!」
「お〜焦ってる焦ってる!こりゃ本当かもよみんな!」
またどっと笑いが起きる。ひゅーひゅー、という冷やかしの声。ちょっと心配になって昴のほうを見ると、一緒になって笑っていた。はぁ、ドキッとしたけど、まぁいっかぁ…。

その後もそんな雰囲気で和やかに会は進んで、お酒も少々はいってみんな元気になってきた。…まだ、柊司は来ない。もしかしたら、今日は来ないのかな…。それにしても、昴の事はどうしよう?昴の事は好きだけど、でも…。ええぃ、こんなに考えこんでてもしょうがない!!とりあえずメイク直しでもしてこよっと。
トイレに立って、鏡の前の自分を見つめる。
「もう…元気ないぞ茉莉!しっかりしっかり!」
よしっと気合を入れて、トイレを出ると…
そこには、柊司が、立っていた。
「しゅ、柊司…。」
「お…おぅ、……塩谷。久しぶり。」
「うん、久しぶり…。」
…もう、茉莉って呼んでくれないんだ…。
「来るの遅かったね、どうしたの?」
寂しい気持ちを隠しながら、聞く。
「あぁ、なんか思ったよりも道混んでてさ。やっぱ電車で来るべきだったかな。」
柊司が、はにかんだような笑顔を見せる。あぁ、柊司だ…って、その笑顔を見て改めて思った。
「そっかぁ〜、…大変だったね。みんな関口くんのこと待ってるよ!行こっ。」
決死の思いで彼の腕をつかんで、みんながいるところへ連れていこうとした。少しでも、今だけでもいいから、柊司に触れていたかった…。
「そういえば、あの彼女とはうまくいったの?」
…後ろを振り返らないで、聞く。もしかしたら、少し涙声だったかもしれない。
「あ?……あぁ、まぁ…。」
「またまた〜隠さなくていいんだよ?どうせラブラブなんでしょー。うらやましいなぁ。」
心なしか、口調がいつもよりきつくなる。
「いや…。」
…柊司がちょっと焦ってる。ごめん柊司、あたし、そんなつもりじゃないの…。でも、溢れ出したやり場の無いこの気持ちは、そう簡単には止まってくれそうになかった。
「全く突然フるなんてさ。ひどいにもほどがあるって!そのくせすぐ、…っ…、他の人と付き合っちゃうなんてさー。」
…自分が相当ひどい事を言ってるのは、分かっていた。涙は、今にも溢れてしまいそうだった。
「…あぁ。塩谷の言う通りだよ。俺はどうしようもない奴だから。」
何で、何で怒らないの、反論してこないの…!柊司、ねぇ…!
「本当よ〜いつからそん、な……。」
…その時…我慢もむなしく、あたしの目から涙が落ちた。
「…塩谷?どうした?」
腕をつかんだまま立ち止まったあたしを変に思ったのか、柊司が話しかけてくる。何も、答えられない。
「おい…」
逆にあたしの腕をつかんで、そっちを向かせようとする柊司。
…もう、我慢の限界だった。涙が、どんどん溢れてくる。その腕を振り払って、柊司を涙目でにらみつけながら、あたしはほとんど叫んでいた。
「いつからそんな!…っ、…弱い男に、なったのよ!」
「……。おまえ…」
茫然と固まってしまった柊司をおいて、あたしは涙を溢れさせたままダッシュで会場から飛び出した。
「待てよ、茉莉!」
柊司の声が、人混みに紛れて聞こえた気がした。あぁ、やっと、名前で呼んでくれた…。カツカツと響く自分のサンダルの音を聞きながら、そんな事を思った。

「…はぁ…。」
午前5時。
ふと目が覚めると、あたしは自分の家のベッドにそのままうつぶせていた。目が覚めても、昨夜の事が頭の中をぐるぐる回っていて…なかなか起き上がれない。
「…せっかく、会えたのに…。何言ってんのよ、最悪…。」
自己嫌悪に陥ってきて、また泣きそうになる。その時、傍に放り投げてあった携帯が光ってるのに気付いた。
「ん…?」
見ると、そこにはメール5件、着信9件と表示されていた。
…全て、柊司からのものだった。
「嘘…何、こんな…。」
あぁ、でも…そりゃ、久しぶりに会った元カノにいきなり泣かれたら、ちょっとは気になるか…。ふぅ、と溜め息をつく。
でも…昨夜の事は思い出したくなかったけれど、本当に久しぶりに表示された“柊司”という名前は…ちょっと嬉しかった。
「あたしから連絡…なんて、出来ないよねっ。」
わざと明るく言って、シャワーを浴びにいく。
今日からまた、頑張ろう。
そう、思うしかなかった。


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