陸-4
「さあて……。開(ぼぼ)は存分に火照っているゆえ前置きは要らんだろう。さっそく、ぶち込んでやる!」
八魔多はお国を四つん這いにさせると、後ろ取り(後背位)で挑みかかった。
とてつもなく鰓(えら)の張った亀頭が膣口を押し広げて埋没する。それだけでお国の尻に震えが走り、腹が小刻みに波打った。総身に鳥肌が立っている。なんと、入れられただけで快楽(けらく)の頂点に達してしまったのである。八魔多の剛直のおぞましいまでの威力だった。
しかし、そのおぞましさを思い知るのはこれからだった。肉茎の野太さに秘壺ははち切れんばかりになり、長大さに子宮(こつぼ)は身体の奥へ奥へと押し込まれた。
「太さの圧」と「長さの圧」。これらが激烈な快味をお国にもたらす。
「うあああああああっ…………!」
腹から絞り出すような喘ぎ声。歯を食い締めて抗いを示す……そんなことなどもはや出来はしなかった。剛直の一往復ごとに「ううっ!」と声が漏れ、雁高亀頭のひとこすりごとに膣口から愛液が掻き出された。
傀儡女の修練の中で、他人の交接を見て学ぶということもあったが、早喜はこれほど生々しいまぐわいを見るのは初めてだった。あの気の強いお国が、すっかり女の顔になっていた。まだ時折、首をねじ曲げ八魔多を睨むこともあったが、深い突き入れを見舞われると顎を跳ね上げ「あんんっ!」と鳴いてしまう。
驚異的な大業物……お龍が宝刀と言った大魔羅は、お国からどんどん敵愾心を奪い、代わりに、どんどんどんどん愉悦を植え付けていった。
「ああああ〜〜〜〜〜! おおおおお〜〜〜〜〜〜!」
お国は唄う時に声量豊かだったが、淫楽によって引き出される声も大きかった。気を失っていた海野六郎も目を覚まして眼前の光景に仰天し、宇乃をはじめ一座の娘たちは皆、必死に目をつむり、性の地獄図を見まいとした。だが、腕ごと縛られているゆえ手で耳を塞ぐことが出来ない。お国の牝の咆哮は、嫌でも鼓膜を震わせた。
八魔多の交接は体位を変えながら長時間に及んだ。女陰から溢れ出る愛液の他に精液らしきものも見えたので吐精したことは分かったが、出しても萎えることなく、魔羅を抜かずに抽送を続けていた。
「抜かずの三発とはいうが、八魔多の大将の場合、五発は余裕だからなあ」衣を羽織った小太郎が帯を締め刀を落とし差しにしながら呆れたように言う。「さてさて、今宵は何発までいくものやら……」
お国の目はもう焦点が定まらず、絶頂に至る時は白目を剥くようになっていた。
そして、十指に余る逝きの果てに、ぐったりとなり、薄目をあけ瞼(まぶた)を痙攣させているお国の耳元で、八魔多がボソリ…と訊(き)いた。
「お国……、誰に頼まれて家康を殺そうとした?」
お国は無反応だったが、八魔多はまた同じ調子で訊いた。すると、お国の唇が微かに「あたし……」と動いた。八魔多がさらに訊いても、「あたし……」とだけ答えた。
「……おまえ自身の意志で家康に刃を振るったのか?」
お国はゆっくりとうなずいた。
「どうしておまえごときが家康に殺意を抱く?」
お国の唇は動かなかったが、ややあって「う……ら…み」という言葉が出た。
「恨みを抱いていたのか……。しかし、それだけではあるまい。おまえに荷担する存在なくして江戸城に招かれるというところまでは行くまい。誰がおまえの後ろにおる?」
お国は押し黙っていたが、やがて、その口から「さ……」という言葉が漏れた。もしも続いて「なだ」と言われれば、真田が家康殺しに荷担していたことが露呈し、昌幸・幸村は流刑という甘い仕置きではなく死罪を命じられるに相違なかった。
その時である。道場の格子窓が大きな音とともに壊れた。同時に三つの影が飛び込んできて、一人は高坂八魔多に打ちかかり、一人は風魔小太郎に切っ先を向け、一人はお龍を槍で牽制した。
早喜は思わず叫んだ。
「兄者!」
八魔多を壁際まで追い込み、忍刀を構えてじりじりと間を詰めているのは早喜の兄、猿飛佐助であった。小太郎と切り結ぼうとしているのは霧隠才蔵。とっさに薙刀を取ったお龍と対峙しているのは由利鎌之助だった。この真田の三勇士と八魔多らが相まみえたのはこれが最初。しかし、佐助も才蔵も相手をかなりの手練れと瞬時に見抜き、安易に切りかかることはしなかった。鎌之助だけはさっそく槍をしごき、お龍の薙刀と数合打ち合った。手こずるかと見えたが、結局は男の膂力が勝り、お龍は腹に槍を受け悶絶した。そして鎌之助は海野六郎の後ろへ機敏に回り込み、戒めを解いてやりながら言葉をかけた。
「来るのが遅れた。済まぬ。お国の連れ去られた先が、てっきり服部家の屋敷だとばかり思い込み、そちらに行ってしまった。半蔵門の近くで伊賀者を捕らえ、ようやくこの道場を聞き出して駆けつけたが……」
自由の身になった六郎はふらつきながらも宇乃の縄を外してやり、鎌之助は早喜や一座の娘たちを縄から解放した。