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真田拾誘翅(さなだじゅうゆうし)
【歴史物 官能小説】

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「なんでまた?」

「小太郎、おぬし睦事(むつみごと)はそこそこじゃが、計り事はいまいちじゃのう。方広寺の大仏殿再建を進めているのは秀頼。出来上がる鐘の銘に家康への呪いが混入しておれば、秀頼を糾弾できるであろうに」

「ああ、そういうことかい。家康は豊臣家を滅ぼしたがっているからなあ。秀頼に戦を仕掛けるきっかけを色々とこしらえてるんだな」

「そういうことじゃ」

「しかし、なぜそれを俺なんかに言う?」

「方広寺の鐘の銘文を考えることになりそうな人物が他にもいる。そやつは徳川の息の掛かっていない男。もしもそいつが秀頼に選ばれれば家康の計り事は水の泡。そこでじゃ小太郎、……おぬしにそやつを殺めてもらいたい」

「……誰を殺せばいいっていうんだ?」

「京は福知山、曹洞宗光明寺の住職、蓮聖」

「坊主殺しか。寝覚めが悪いなあ……」

「金は、たんと弾むぞえ」

「おばばの口約束だけじゃなあ……」

「ほれっ」

「……なんだい、この包みは」

「手付じゃ。金で四匁ほどある」

「ほう……」

「首尾良く蓮聖を葬れば、あと二包みやろう」

「おばば。……おめえ、一介の呪術師じゃねえとは思っていたが、ひょっとして八魔多の大将よりも格上か?」

小太郎が包みを懐に入れながら少し身構えたが、狐狸婆は手酌で酒を注ぎ、声もなく笑っていた。


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