接近-6
「丹野さんも私、昔から知ってるけど、若い時よりも今の丹野さん、素敵に思う。(な、何言ってるの!?私ったら…!?)」
すぐに失敗したと思った。なんて恥ずかしい事を言ってしまったんだ…、紗英は顔を真っ赤にした。
「何だよ、うれしい事言ってくれんじゃんよ!藤間、まぁ飲めよ〜!」
少しおちゃらけて紗英の恥ずかしさを紛らわす。紗英もその恥ずかしさを誤魔化すかのように注がれたビールをグイッと飲んだ。
「やっぱ結構イケんじゃん!」
「そんな事ないよぅ〜」
顔がほんのりとピンクに染まって来た。
「丹野さんも!」
「今日は飲もうな?」
「うん。」
紗英は若い頃のように楽しくなって来た。健太郎との会話が楽しい。もはや社内で一番気の許せる男性かも知れない。いつの間にか紗英は健太郎との距離を縮めて会話をしていた。
(ヤベぇ、酒が入ってフェロモンをプンプンさせてきた。クソッ、エロいな子の女…。)
チラッ、チラッと視線を送る胸元。今すぐ手を入れ豊満な膨らみを思い切り揉みたい気分だ。脇も気になる。妙にセクシーだ。スカートから覗く膝、ふくらはぎにもムラムラする。香水の匂いも手伝い、健太郎の性欲は高まる。
健太郎は少しずつ会話をいやらしい方へ持っていく。
「藤間ってさぁ、若い頃よりも今の方が全然いい女だよなぁ?」
「えっ?そぉう??」
「ああ。若さではどうにもならない何かを持ってるよね。」
「え??何ぁに?それって??」
「何だろう…。色気かな??」
「え〜??私、色気あるぅ??」
「あるよ、物凄く、さぁ。」
「本当〜??」
嬉しくて仕方がない紗英。歳をとる毎に女として見られる頻度が減っていくような気がしていた紗英にとっては嬉しい言葉だった。
「でも何だかんだ言っても男の人は若い子が好きだからね〜。」
でも私だってまだまだ女なの…、その気持ちを含んだ言葉を健太郎に言った。
「若い子はチヤホヤされるのは当然じゃん。何の努力しなくてもそこそこ輝けるしね。でも30超えて輝ける女ってなかなかいないし、30超えて輝ける女ってのが本当にいい女なんだって思うけどね。俺は。」
「…」
嬉しくて言葉さえ出なかった。男は私みたいなおばさんより若い子の方が…、最近はそう思うことが多かった。自分を賤しむ心を健太郎に救って貰ったかのような気持ちになった。この時かも知れない。紗英はこの時一瞬だけ心の中で、抱かれたい…、そんな気持ちの芽が生まれたのであった。