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調教学園物語
【調教 官能小説】

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〜 金曜日・牝鶏 〜-1

〜 29番の金曜日 ・ 牝鶏 〜
 


 午前中の犬、5限の馬、そして6限。 

 馬に身を貶める装いはすべて取り外し、机にしまった。 ゆえに6限が始まった時点での私たちは、いつも通り首輪のみを身につけた、生まれたままの姿をしている。

「起立、礼ッ。 ご指導よろしくお願いしますッ」

「「ご指導よろしくお願いします!!」」

 教室中に響くくらいに大きな声をださないと、教官は納得してくれない。 納得してくれない場合はすかさず『点呼』を要求される。 逆に声をピタリと合わせて大きく唱和したときは、つまらなそうに数回頷いてから、次の時間の説明をするのが常だ。

「よろしい。 それでは全員、椅子の上で第2姿勢」

「「ハイ! インチツの奥で理解します!!」」

 今回の返事は合格らしく、点呼なしで待機を命じられる。 教官の指示に従い、すかさず椅子に蹲踞して股間を拡げる35名。

「お前たちの存在意義があるかないかを議論するつもりはありません。 そんなお前たちですから、ヒト未満の生き物、つまり犬、ポニーの役割を与えられることがあります。 これはどうであれ大変名誉なことですから、喜んで従うのが当然ですね。 なにしろ犬にしろポニーにしろ真獣類に属するわけで、進化系統的には上位種です」

 真獣類……幼年学校の理科の時間に聞いたことがあるような、ないような。 目立つリアクションはしたくないから、みんなと同じようにジッと教官を見つめ、一生懸命聞くフリをする。 

「例え変温動物であったとしても、血管をもたない節足動物であったとしても、他の生物を生体模写することは、自分たちの価値を確認する有用な手段です。 進化系統的に下等であるほどヒト的に模倣しにくいですので、魚類や両生類、甲殻類は今後のカリキュラムに任せます。 そこに至るステップとして、この時間は羽毛と尿酸を旨とする鳥類を代表して『雌鶏(メンドリ)』の仕草を学びましょう」

 要するに動物の真似をしろ、ということだと思う。 最初からそういえばいいのに、2号教官の言い回しはいつでも勿体ぶるから理解し辛い。

 私の幼年学校でも、持って回った言い方をする先生ばかりに囲まれていた。 ストレートに『女子は男子より能力が劣る』だとか『女子は子宮でモノを考える』だとか『女子の存在意義は男子を愉しませるためな時代は終わった』とか、ハッキリ教えてくれる先生はいなかった。 模擬試験で偏差値75をとった私が、得意気に私より上位の生徒がいるかどうか尋ねたとき、幼年学校の担任はクスッと微笑むだけだった。 正直に『男子の平均偏差値は85です』と教えて欲しかった。

 保健の講義で、子宮の卵管で精子と卵子が出会うと赤ちゃんができると教わった時、私はてっきり自分も将来子供が持てると思っていた。 正直に『人口子宮が発達した現在、生の生殖による子孫形成は行われていない』と知らせて欲しかった。 男女平等、ジェンダーの解消を訴える社会運動家のその後について質問したとき、当時の教科担当は言葉を濁すだけだった。 『性差を否定する女性は全員『家具』になりさがり、一生をかけて不遜の罪を償った』ことを、なぜか先生は紹介してくれなかった。

 短かった学園入学合宿で知ったいくつもの事実は、幼年学校では無縁なものばかりだ。 徹底的に自尊心を破壊されながら、破壊されることが当然と思うくらい、哀しい事実が多すぎる。 今から思えば、知らない方がいいことはたくさんあったのだ。 何も知らないから無邪気でいられ、だからこそ、私たちは幼年学校で自分の存在意義を信じて健やかに過ごすことができた。 家庭でも、母親が自分の生みの親であり、私は母の血をひいていると疑いなく暮らすことが出来た。 自分は幸せな未来に向けて歩んでいる実感があった。 すべてが虚構だと知らないがゆえに、無知からくる柔らかさでもって自分の身を守ることができた。

 一度知ってしまえばすべての前提がガラリと変わる。 禁断の果実を口に含んだ、いや含まされたのだから、もう幸せなあの頃には戻れない。

 なんて思いを巡らせるうちに、2号教官の起伏がない声が響く。 机の蓋が開き、つるりと剥けた卵が顔をだす。



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