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竹邑が言うと彩希の胸が甘く潤った。女に小慣れた男に可愛いと言われても真に受けてはいけないのだろうが、率直に嬉しい。何度絶頂したか憶えておらず、まだ下腹部が痺れていた。
「……よかった」
「何が?」
「今日会ったのがオジサンで。……変な男に捕まってたら、ボロボロに犯されてたかもしんない」
「今ごろ気づいた?」
竹邑が後頭部を支えて自分のほうを向かせてくる。「じゃ、紳士な俺に、ご褒美くれる?」
「いいよ……」
彩希は首にしがみついて深いキスを交わした。合わせた唇が鳴ると頭が溶けそうだ。
由香里の言ったことは正しいかもしれない。もっといい男がいるのかもしれない。竹邑の肌に触れているとそう思えてきた。
彩希はキスをしたまま竹邑の首筋から鎖骨の凹凸をなぞり、更に手を下ろしていくと乳首に触れた。ピクリと竹邑の体が震える。
「……あれ、オジサンも感じてる?」
「そんな爪でイジられたらね」
「そっか」
可愛いなと思った。硬くなった乳首を傷つけないように爪先で軽く引っかくと、竹邑の鼻息を顔に感じる。
薄闇の中で弟の体を弄り回した時、とてつもなく可愛いと感じた。だが今力強く自分を抱きしめてくれている体だって、乳首を爪で引っかかれてフルフルと震えている。ということは……。彩希は手を更に下ろして行って、まだ腰に巻きつけたままのバスタオルの袷から指を中に入れた。竹邑が彩希の動きに合わせて脚を開く。内ももを遡っていくと柔らかい袋に触れた。皺んだ肌面に通った筋を辿って、肉竿の根元へと到達する。
「……さわっていい?」
「もう、ほぼ触ってるじゃないか」
苦笑しつつ竹邑は身を起こして、バスタオルを取り払って足を開いた。彩希も起き上がって、足の間にできたスペースへ正座する。身を屈めて下腹の茂みから生いる幹をまじまじと見つめた。まだ少し項垂れているから根元を握って縦に向ける。手のひらのムニュリとした感触に、
「……あんまり硬くない」
「歳のせいだ。……康ちゃんのと比べないでくれ」
「……! なんで知ってんの?」
「さっき『康ちゃんにフラれた』って自分で言ったじゃないか」
「そっか」
本当に言ったことを憶えていなかった。「あ……」
握っているだけなのに、手のひらの中でムクムクと膨らんで硬度が増してくる。康介のことを思い出して消沈しそうになっていたが、その現象を目の当たりにして、手のひらの中の感触の睦まじさに気分が萎えずに済んだ。
「おっきくなってきた」
「そりゃ、彩希みたいな可愛い子に触られてたら大きくなるさ」
また胸が疼いた。
「……もっかい言って?」
「大きくなる?」
「ちがうー!」
彩希は声に出して笑った。まさか今日こんなに快活に笑えるなんて思ってもみなかった。「私みたいな、なに?」
「……彩希みたいな可愛い子?」
「うん、それそれ」
彩希は拳をゆっくりと上下させた。完全に上向いた竹邑の男茎をよく見ていると、扱く度にだんだんと亀頭が膨らみ、時折根元の方から脈動が伝わってくる。「……きもちいい?」
「ああ……」
両手を後ろに付いて彩希に握らせている竹邑の声がトロみを帯び始めて嬉しい。
「どういう風にしたら気持ちいいか教えて。上手になりたい」
「そんなの、人それぞれだぞ?」
「いい。オジサン、女の子にいっぱい触ってもらってそうだから」
「……なんか、ひどいこと言われてる気がするな。……もっと上を握って動かしてくれ」
「こう……?」
彩希は言われるままに傘の辺りを握って動かす。
「もっと強く握っていい」
「うん……、痛くないの?」
「大丈夫」
握力を強めて先端を扱くと、ドクンッと肉幹が蠢いた。先端の孔から透明の雫が玉を作り始める。
(あんまり康ちゃんみたいに汁出てこないなぁ……。気持ちよくないのかな)
高校生と中年の鋭敏さの違いを知る由もない彩希だったが、あまり執拗に他の男と比べるのは失礼だということくらいは分かったから訊かなかった。あれだけ絶頂をもたらしてくれたのだから、下手なりにせめて竹邑も気持ちよくなってほしいと思い、心を込めて扱いていく。
「ツバ、垂らすと気持ちいいんだ、ヌルヌルして」
「ん……」
彩希は素直に口内に唾液を溜めると握っている接面に垂らし落とした。握った手の中に浸み込む。クチュッとした滑りは、確かに気持ち良さそうだ。
「ツバでされると、男の人って気持ちいいの?」
「たぶんみんなそうだ。もっと強く握っても痛くないからね」
「わかった……」
もう一度唾液を溜めて補充する。手の中で竹邑の男茎は完全に勃起して、強く血潮を弾ませていた。
「こんなに勃ったのは、……久々かもしれない」
息を荒げつつ竹邑が感想を漏らすと、彩希はニッコリと笑い、
「ほんと? うれしいかも……」
「上から手被せて、先だけ指でイジってみてくれないか?」
「うん。……んと……」
手を離して五指を真上から亀頭の縁に掛けて摘む。