第一話-3
「あの、皆さん。少し落ち着きませんか?
リラックスして平常心を保っておかないと
もしこの後、私達だけ別の研修があった場合、支障が出るかもしれませんし。」
すわ抗争勃発か、といった雰囲気の三人の間に凛とした涼やかな声が割って入った。
垂れ目がちな目尻の下の泣きぼくろが印象的で、ポニーテールを揺らしている、声の主は
柔和な笑みを浮かべ、穏やかな物腰で彼女達へ近づいた。
「アメでしたら持ってるんですけど、いかがですか?
血糖値が下がると、脳の働きも鈍っちゃいますから、糖分補給は大切ですよね。
よかったら食べて下さい。」
ポケットからキャンディーを取り出し、ロリ女に手渡す。
ぱぁっと表情を明るくして、彼女はそれを受け取ると
ニコニコしながら口の中に放り込んだ。
「ふわぁ〜。ありがとなの〜。甘くて美味しいにょ〜。」
口の中でコロコロ飴玉を転がしつつ、トロけたような顔で
上機嫌になってぴょこりと頭を下げる。ツインテールがぴょんと動いた。
「どういたしまして。」
温和な微笑みを返してから、モデル女とメガネの女にも向き直る。
「お二人とも、言ってる事の本質はきっと間違ってないし
ここにいる皆も少なからず思ってた事だと思います。私だってそうです。
だから、皆の不満な気持ちを代弁して憎まれ役を引き受けてくれた事に
お礼を言わせて下さい。」
滔々と述べてから、深々と頭を下げる。
二人は納得とまではいかず、まだ何か言いたげだったが
さすがに初対面の相手にここまでされては毒気を抜かれてしまったのか
とりあえずその場を引き下がった。
「ふぅ、よかった。」ポニーテールの女は心中でそう呟いて
胸を撫で下ろ……そうとしたところ、背後から不意打ちでそのバストを
むにゅんっ!と掴まれた。
「ひゃぁっ!な、何ですかっ!?」
「ふにゅ〜。おねぇちゃん、すっごくオッパイがおっきくて
モミモミしてみたくなっちゃうにょ〜。」
「ち、ちょっと、だ、だめですよっ……。」
先ほどのロリ女が、胸をむんずと遠慮なく掴んで揉み解している。
実際、掴まれたバストは見事なほどの質量を主張して膨らんでおり
支給された制服をこんもりと押し上げ、その豊満さが瞭然に見て取れた。
「ふみゃ!やわらか〜い。いいな、いいなぁ。
こんなぷにゅぷにゅでおっきなおっぱい二つももってるなんて
おねえちゃんズルイにょだ〜。」
「はぁぁんっ!やめて、そんなに触らないで……くうぅんっ!」
衣服の上からでも絶妙の弾力を指先に伝えてくれる乳房の感触に
すっかり虜になった様子で、執拗に胸をこねくり回し、揉みたくるロリ女。
先ほどまでの落ち着いた物腰はどこへやら、刺激されるたび
吐息混じりに甘ったるい嬌声をあげ、悩ましげな表情で悶えるポニーテール女。
室内にいるのは女性だけとはいえ、明らかに妖しい光景が繰り広げられ
先ほどとは違った意味で、気まずい空気が流れる。
「げ、下品な……。」
メガネ女は、居心地悪そうに汗を浮かべながら呟き、クイッとレンズの縁を持ち上げる。
その直後、扉が開く音が響いた。