軽井沢の女-2
生きたいように生き、思い残す事は何もないのだが、この鈴を残して死ぬ事だけが心残りだと真田は言った。
真田は若い頃に妻を亡くし、ずっと独身であったが、晩年になって自分よりもはるかに年下の鈴と交際するようになったのだが、自分がこの世を去るにあたって鈴を信頼できる村田に託したいと言った。
「あの女は私がいなくなると女でいられなくなる。それがなんとも忍びがたい。」
病室ですっかりやつれた顔で真田は天井を見つめながら話した。鈴は真田と出会うまでは真の女の悦びを知らずにいた。美人であるにも関わらず、控えめで上品であるが故、言い寄る男も数多くおり、複数の男性と付き合ったが、どの男と肌を合わせても不快感こそあれ快感などかけらもなかったという。
その話を打ちあけられた真田が不憫に思い、ありとあらゆる策を考えそして行き着いた先が「縛り」だった。鈴は縛られる事によってやっと女の幸せを得る事が出来たのだ。しかし自分が死ねば鈴を縛る者がいなくなり、鈴は再び不幸な女に戻ってしまう。自分亡きあと、鈴の幸福を誰よりも信頼できる村田に託したいというのだ。一生暮らせるだけの金と軽井沢の別荘を与えてあるので経済的な事は心配しなくていい。あとは村田に鈴を幸福にする技術だけを習得して欲しいと言われた。
「これを頼めるのはお前しかいない。引きうけてくれるか?」
弱々しく語りかける真田に対して村田はうなずくしかなかった。入院中に書き留めたものだと言って大量の大学ノートを渡された。そこには細い鈴の体に縄を掛ける独特の縛り方や、責め具の使い方が細かにびっしりと書かれていた。
「最後まで面倒を見てやれなくてすまんと伝えてくれ。あとは頼む。」
それが真田の最後の言葉だった。
真田を看取ったあと、定年までの一年を残して村田は会社を辞め、月に一度程度この軽井沢を訪れるようになった。亡き真田の信頼に応えるため村田は鈴を「悦ばせること」に専念してきた。あれから2年、ようやく気持ちにゆとりを持って鈴と向きあえるようになった。
「おいしい和菓子買っておきましたわ。」
トレイを持って鈴が戻ってきた。ありがとうと礼を言って村田は荼をすすりながら緑がまぶしい庭を見わたした。
「本当に静かだなぁここは。鳥の声しか聞こえない。」
芝生がしげる広い庭には数本の太い木が植えられていて梅雨の中休みの柔らかな太陽に照らされてキラキラ輝いている。
「バタバタしてごめんなさい、私、準備しますね。」
鈴は東京から長い距離を運転してきた村田を気づかいながらもーか月振りの幸福に早くありつきたいのか、そそくさと動きまわって準備を始めた。
(さて今日はどんなふうに悦ばせあげようか)
村田の頭の中には真田の残してくれたノートの中身が全て入っている。今日は天気もいいし屋外での縛りもいいだろう。開放感がより一層鈴の感度を高めるに違いない。
「あ、あの、準備出来ました。お疲れでなかったら早速にでも…」鈴が少し頬を赤らめながらちょこんと村田の前に正座をし、よろしくお願いしますと頭を下げた。
「うむ、じゃあ服を脱ごうか。」
村田が促すと、はいとうなずき、鈴はすっと立ち上がり背中のファスナーを下ろし、スルッとタイトなワンピースを落とした。上下の下着を外すと白く細い見事な裸体が現れる。村田が一番魅力を感じる細いウエストも陽の光にさらされた。
性的興奮に股間が反応するのを村田は慌てて首を振って押さえつけた。
(いかんいかん、俺が欲情してどうする。会長、今日も上から見守ってくださいよ。)
鈴が床に並べた大量の麻縄の一つを取り上げ、まず定番通りに後ろ手縛り、乳房の上下に縄をかけ、背中で縛りあげ乳房を絞り出した。鈴の胸は小さめだが縄をかけるとパンパンに膨れ上がり形よくせり出す。この段階ですでに目を閉じ切ない吐息を漏らしていた。
鈴の好みの縛りはとにかく大量の縄を使って複雑に縄をかけるものだった。5mや7mに切り分けた麻縄を使ってとにかく時間をかけがんじがらめに縛るのだ。縄をかけて力を入れて締める度にあっ、とかいいっ、と短く反応する。