〜 木曜日・手淫 〜-4
続いて指定された場所は『膣』だった。 チツマンコを弄るように、と促す教官に従い、一斉に右手を股間に這わせる。 両手が自由に使えたら、片手で膣口を広げ、もう片方の指を奥に挿れただろう。 けれど現在、左手は鼻に固定されていて、使えるのは右手だけ。 股間をやや前方に張って、腰の動きでもって股間を広げ、親指と薬指で膣を開く。 椅子の上で腰をつきだしているため、教官からすれば全員の秘すべき部分が一目瞭然なことだろう。
中指と人差し指を『V字型』に開き、それぞれの第一関節を曲げて『くの字』にした。 こうすれば2つの指先と2つの指背が、膣の天井にある一番ビクンとなる箇所に当たる。 そのままグリグリ手首ごとひねれば、膣全体が熱くなる。 しかし、いつもならコレだけで十分に絶頂できたとしても、すでに何度もこなしているせいで、感覚が鈍くなっている。 倦怠感のせいで、絶頂するにはあと一押し足りない。
これまでは入口付近の壁を擦って達していたので、奥まで挿れることはほとんどなかった。 大切な、私にとって一番大切な部分を傷つけることが怖くもあった。 あまりに強い感覚が恐れ多いとも思っていた。 けれど、私がどう感じるかなんて二の次だ。 何としても絶頂して首輪を赤く灯さなければ。
大きく息を吸い、指をグイッとねじこむ。 指先に、柔らかい粘膜とは違ったシコリが触れる。 膣口、膣壁、さらに奥にある『ポルチオ(子宮口)』だ。 途端に身体の奥がズンと揺れた。 ただ単に気持ちよくて火照るのではなく、幸せで身体がぽかぽかするような、お風呂でゆっくり温もるような。 指先で何度も擦ると、ジワジワとお湯が沁み渡るように、股間から身体が溶けてゆく。 陰唇を弄って達するとはまた違った、内臓から湧いてくる熱に身を任せ、私は絶頂許可を申請した。 数瞬の間をおいて、ちゃんと首輪は反応してくれた。
これで……3勝5敗。 1度の自慰をキッチリ5分で区切る教官なので、残り2回チャンスはある。 教官の要求を完全に達成はできないけど、半分守るのとそうでない違いは大きいはず。 絶頂直後の倦怠感の中、次の指示があるまでが休息時間だ。 深呼吸して、幼年学校時代の幸せな時間を思い出して、丸暗記した古文単語を反芻して、少しでも籠った熱を冷ます。
そうするうちに、教官が機械的に手を叩いた。 膣の近くに空いた小さな穴――『尿道』だ。 ここを触って得られたオーガズムがあってこそ、プリンターや複写機が扱えるんだとか。 私達は2日前、尿道をロッドで擦り、拡張し、尿を何度も出し入れさせた。 しかし、膣や肛門とは違い、尿道から快感を得たことは全くない。 そんな器官で自慰をしろなんて、注文自体が無理過ぎる。
一番細い小指をそっと尿道の入口にあてたまま、私は固まる。 入れるのが怖い。 そもそも指は、爪がある分ロッドよりも挿入し辛い。 痛いし怖いし、そもそも気持ちよくなれるわけがない。 指を挿入しようとした姿勢のまま、私はピクリとも動けなかった。
これで6敗。 眩暈がする。 まだ1時間目だというのに、教官の指示を6回も無視してしまった。 勿論精一杯頑張ったけれど、結果が全てだ。 目の前が暗くなる中、教官が指定した最後の場所は『クリトリス』。 未来の不安をかき消そうと、私は再び股間に意識を集中する。
既に度重なる他器官の愛撫で、私のクリトリス――Cグループ生的には『くりちんぽ』――はこれ以上ないくらい勃起していて、触ったら取れそうなほど固くなっていた。 人差し指と中指で挟むように、クリトリスの側面を擦る。 小刻みに震わせながら素早く擦れば、これだけで達するは十分だ。 ただ、どうせなら大きく達したい、絶頂で未来への怖れを上書きしたくて、中指の腹をそっと肉芽の先端にのせた。 そのまま軽く押しつつ、上下に揺らす、円状に転がす。 刺激がクリトリスから波状して、陰唇、膣全体がピクンピクンと痙攣する。 くぱぁと割れ目が広がって、まるで指先を呑み込もうとするかのよう。 私は落としていた腰を戻し、爪先に力を入れた。 下半身をピンと伸ばし、太腿の付け根からお腹まで、膣の傍の筋肉を緊張させる。 鼻に突き刺した指も、ついツプッと奥までさしてしまうくらい、身体中が来る刺激への期待に震えた。
ジワジワではなく、グイグイと、中から外へ飛び出す感覚。 鼻躊躇うことなく絶頂許可を求め、そのまま一気に解き放つ――恍惚の向こう側、首から赤い光が迸った。
……。
教官の『自慰終了』の合図と同時にチャイムがなる。 クリトリスでの自慰は、全員が3分程度でこなしていた。 つまり絶頂から2分程度休めたので、辛うじて平静をたもったまま1限の終わりを迎えることができた。 机から降り、挨拶をして、教官が教室を後にする。
ひたすら自分で自分を慰め、声は殺し、体中を揉みほぐし。 鼻に指をつっこんだ不様な顔と、抑えきれない甘い喘ぎと、みっともなく零れた体液と、それにともなう淫らな恥ずかしい香りをまき散らした50分。 これまでの短い学園生活の中で、最も短く感じた50分だった。