初夏の莟 後編-2
『よく思い出してごらん? 今日まで見続けていた動画を』
バスタブ縁に腰を掛け、跪かせた少女自ら口にふくむことを促す。
その言葉に十数秒の間隔をおいて、俺の希もまた叶えられることになる。
先程の乾ききった感触とは大きく異なる粘膜の悦びが陰茎先端を包む。
不慣れ故、繰り返し歯先が当たる感覚さえ愛おしい程に、陰茎の高ぶりは増していく。
『もう少し深くふくんでごらん? そして舌先で飴玉を転がすようにしてみるんだ』
あえて【咥える】と言う露骨な表現は避け、この場においては口淫への抵抗を最小限で済むよう導く。
賢い娘は何でも上手に熟すものである。
例えそれが忌み嫌う行為にあっても、素直なまでに教えに沿い驚くほどの変化をみせる。
「っんぅ ふうぅ むふぅぅっ ううぅ」
言葉にする事は無かったが、恵利子自身理解しているのである。
いくら口にふくみ続けても、それより体液が吐出されなければ終わりなき苦しみである事を。
10分もするとそれと意識する事無く、頬を窄め自ら頭部を前後させはじめる。
それはまるで目にさせられていた動画そのままに。
『そろそろ射精(だ)すよ、恵利子。解っているね?』
背筋を貫くような快楽に口元を歪ませ、愉悦の表情すら浮かべていた。
拘束状態、跪かせ咥えさせながら、左手では頭部を右手では頬を愛でその感触を愉しむ。
数秒のタイムラグはあったが、濡れ羽色の黒髪が小さく縦に揺れた事を感じ取る。
びくぅっ びくぅっ びくぅうぅぅ
陰茎が数回脈打ち、その数だけ愛らしい口内に俺の想いが放たれる。
「ん!!! んうぅぅ うぐうぅっ」
眉を寄せ苦悶の表情を浮かべながらも、溢すことなく一度は狭い口内にて受け止める。
まだ俺の想いを嚥下させる事は叶わないも、粘度の高い体液が薄桃色口元より滴れ喉元へとつたう。
《口淫が唯一、自身の純潔を守る術である。そして嫌悪の情に苛まれながらも、止む無く行うのであれば効率的に行う。それが得策であると最悪の状況の中、聡明な少女は結論付けたのである》
それは当然の思考の終着点、帰結とも言え、聡い恵利子であればなおさらとも言えた。
莟の綻(ほころ)び へとつづく