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〈熟肉の汁〉
【鬼畜 官能小説】

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〈快楽の源泉〉-12

『へへ……さっきは悪かったな。いや、アレでも気を遣ったんだぜぇ?』

「私を売ろうとしたクセにッ…ヒック…あ、あんな……ヒック…あんな気味悪い奴に…ッ」


走り出したミニバンの中で、恭子は悔しさをブチ撒けていた。
よりによって同じアパートの隣人に、しかも真性の変質者に売ろうとしたのだから。


『そう怒るなよ。ああいう奴ってのはな、頭ごなしに怒鳴り付けると逆上して、何するか分からねえんだ……だから商談っつう事にして、俺達から歩み寄ってみせたってワケよぉ』

「な…何とでも言えるわッ…ヒック…売ろうとしたのは事実でしょ?ヒック…入れ墨を……入れ墨を見せなくたって……」

『アレを見せたから、アイツはドン引きしたんだろ?「コイツらはヤバい」って面(つら)してたから、見せて成功ってヤツだよ』

『そうそう。それにメールも電話もするなってダメ押しもしたし、もう奥さんには近付きもしないって』


あれやこれやと言葉を並べ、恭子を宥めすかす。
とりあえず、天パ男が再び恭子を狙う事はないだろうし、その一点に於てだけは、脅迫者達は役目を果たしたと言える。


「またッ…また目隠しするの!?もうこんな事しなくたって……」

『悪いなあ。まだ奥さんにアジトへの道は知られたくねえんだ』


何時までも泣き喚く恭子を押さえつけると、いつものように布袋を頭から被せ、構わず山道へと入っていった。
道路はアスファルトから砂利道に変わり、ミニバンはユサユサと盛大に揺すられる。
そして数分の後にミニバンは停まり、恭子の視界は開けた。


『今日はお客さんは居ないからな。ゆっくり夕方まで休んでいけばいいさ』


恭子は間近のコテージに招かれ、そしてドアを開けて貰って中へと入った。

照明スイッチを備えた巨大なベッドが部屋の中央を占拠し、壁に掛けられたテレビがベッドを見下ろしている。
その下にはドリンク類の収められた自販機と小さな冷蔵庫、そしてDVDプレーヤーを上に乗せた食器棚が綺麗に並んでいた。
ソファーは置かれてはいないが、どう見ても普通のラブホテルの室内であり、拘束具の類いは何処にも見られない。


『ベッドにでも座りなよ。いまコーヒー淹れてくるから』


今まで見せた事などなかった気遣いに違和感を抱きながらも、恭子は促されるがままにベッドの縁に座った。
もう涙も鼻水も止まっていたし、頬に残る涙の跡と赤い瞳だけが、さっきまでの恭子の姿を残しているだけだ。


『ほら、安物のコーヒーだけどな。これでも飲んで気分を落ち着けろよ』


今さら“何か”を混入させているとも思えなかったし、そんな小細工などもはや不要な関係にまで堕ちている。
恭子はコーヒーカップを受け取ると、冷ます為に軽く息を吹き掛けて迷わず飲んだ。



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