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『Twins&Lovers』
【学園物 官能小説】

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『Twins&Lovers』-1

第1話 勇太郎とひとみ

(な、なんで・・・!?)
 勇太郎は、戦慄した。文庫本を手にした指が、我知らず震えてしまう。
 その背表紙には、『暗夜奇行』とあった。そして、その作者は「安納郷市(あのう・ごうし)」。
(なんで、じいちゃんの・・・!?)
 そう。「安納郷市」とは、彼、安堂勇太郎の祖父である。本名は安堂郷吉という。勇太郎が、その祖父である郷吉と共に、いまの町…城南町に移り住んでから2ヶ月は経っている。
 しかし、その「安納郷市」の小説を手にした勇太郎が、ここまで我を失っている理由は、彼が自分の最も間近い者の名を見つけたからではない。
 勇太郎は、半ばほどのページを開き、読んだ。



『………
 トオルは、ミナトの背に指を這わせ、なだらかな身体の曲線を楽しみながら、細長い指先を尻に持っていった。そして、白桃のように瑞々しい臀部の中心で立ち止まると、なんの予告もなくその指を突き立てた。
「あ、ああぁぁぁぁぁ!」
 ミナトの口から、恥じらいを知る少女のものとは思えない絶叫が響き、トオルが埋め込んだ指を噛み千切らんばかりに咥えこんだ。
「お嬢さん……」
 トオルは、いま、最愛のひとの不浄ともいうべき場所に、己の指が入って………』



 そう。「安納郷市」とは、官能小説家だったのである。
 勇太郎は、股間の張りを自覚した。いつしか、自分の指も小説の登場人物に倣い、少女のア×スを犯している気分になっていた。これは、安納郷市が、類まれな表現力を有した官能小説家であることを証明している。
祖父は、自分が小説家であり、しかも官能小説を書いていることを口にした事はある。
 そして、祖父の作品を読んだのはこれが初めてではない。だから、「安納郷市」が、祖父のペンネームであることを知っているし、官能小説家であることも知っている。
 だが、彼が我を忘れた原因は、祖父の官能小説を見つけたこともそうではあるが、それ以上に見つけた場所に問題があった。
(なんで……なんで、ひとみさんがこれを!?)
 故意ではないといえ、この部屋のベッドの下を探ってしまったことを、勇太郎は後悔していた。





 少し、話は遡る。
 同じ、城南学園に通う安堂勇太郎と安堂ひとみは、何故か住居も隣同士であった。
 勇太郎は、2ヶ月ほど前に城南町へ越してきた。それで、何故か「安堂」という同じ苗字である隣りの家に挨拶に言ったところ、ひとみが応対してくれたのである。それが、二人の出会い。
「え、あなたもアンドーさん? しかも、<堂>の字!?」
 初めはあからさまに疑いの眼差しをむけていたひとみの第一声が、勇太郎の緊張を解いた。同時に、同じ姓を持つ同じ歳の少女に、関心を持つようになった。
 それはひとみも同様で、自他共に認めるオトコ嫌いの彼女が、こうまで気を許した男子は勇太郎が初めてだった。気がつけば、登下校も共にするようになり、気がつけば夕食なども一緒にするようになった。
 といっても、ひとみは祖母と妹と一緒に暮らしているので、そこにひとり暮らしの勇太郎がなんやかやと世話になっているという図式が正しい。世間一般にいうところのイイ関係では、ない。先に述べた登下校には、妹も一緒なのだ。お互いに良い隣人関係であることをわきまえているから、必要なとき以外は一緒にいる時間もほとんどなかったし、それもあってか、二人を巡る噂話も早くに消え去った。


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