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『Twins&Lovers』
【学園物 官能小説】

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『Twins&Lovers』-82

「……聞いてもいい?」
 ん? とダイスケは表情で、エリカの言葉を促す。
「ダイスケくん、優しいから、喧嘩なんてしないはずなのに………」
「……………」
「どうして?」
 喧嘩をしたのか、言葉を聞かなくても、エリカがそう繋げたがっているのはダイスケにはわかる。そして、おそらくその話題に、必ず彼女が触れてくるだろうということも、ダイスケは予想していた。
「……ごめん、ホントは知ってる」
 しかし、予想外にも、事の真相はエリカの口から出て来た。
「私のため、だったんだよね」
「…………」
 ダイスケの沈黙は、肯定の証だ。
「ダイスケくんが、喧嘩した理由……それしか思いつかないし、それに、ミドリからも聞いた」
「スギヌマか……」
 余計なことを、と、心中、呟く。
「ダイスケくん、私を守ってくれたんだよね」
 そう言って取り出した一通の手紙。それは、エリカに宛てた、ダイスケの手紙。そして、ダイスケが、書いたものではない手紙。エリカに目をつけ、彼女を暴行することを目的に、柄の悪い男子生徒のグループが書きしたためたものだった。
 ダイスケは、級友のスギヌマから、身に覚えのないことで冷やかされたときに、そのことを察知した。それで、先行してそのグループとやりあい、リーダー格の男子生徒を病院送りにしたのだ。
 おかげで自分は無期停学の処分となったが、自分としてはこれでいいと思った。何より、エリカを守れたこと。それだけで、充分だった。
「…………」
 沈黙が、二人を包む。エリカの手にした手紙が、少しだけ震えていた。
「嬉しかったの」
 その沈黙を、エリカが破る。俯きながら、しかし、はっきりした口調で。
「この手紙、結局ニセモノだったけど、もらったときすごく、嬉しかった。ダイスケくん、野球で有名になってから、女の子にすごい人気あったから。それに、ミドリとも仲良かったし……私、辛かった」
 エリカの声が、震え出す。
「諦めようとも思ったけど、でも、ダメだった。だって……」
 エリカが、顔をあげる。ダイスケを見つめ、そして、口にした。
「やっぱり、好きだから」
 幼い頃、何度となく口にした言葉。しかし、持っているその意味がまった違う恋心。
「昔みたいに、もっと……もっと一緒にいたいよ……」
 エリカは、ダイスケの隣に寄る。そんな彼女の唐突な行動に、ダイスケは困惑するばかり。彼の思考は、エリカに思いを告げられたところで止まっていた。
「ダイスケくん……」
 エリカは、ダイスケの胸板に頬を寄せた。
「エリ……」
ダイスケは言葉が続かない。だが、顔をあげたエリカが、つ、と目を閉じたとき、吸い込まれるように自分の唇を彼女のそれに押し付けていた。
「ん………」
 エリカの喉が、微かに鳴る。甘えるように。触れ合うだけのくちづけが、幼い頃の記憶を鮮烈に思い出させる。
 何かと泣いてばかりいたエリカを、守っている自分。そして、泣きながら“ありがとう”といってしがみついてくるエリカの姿に、心の底から癒されている自分。
(ああ、そうか)
 ダイスケは、やはり、変わらず彼女が好きだったことを思い出す。エリカが危機にあると知った時に激しい感情に飲まれ、それを抑えきれないまま相手に怪我を負わせた。それぐらいに強い思いを、彼女に対して抱いていたことを。
 大事なことを、伝えたい。だから、ダイスケは唇を離した。
「あ……」
 少し不満顔のエリカに、優しく告げる。
「エリ、好きだ」
そして、再びその唇を塞いだ。
かつ、と勢いあまって前歯が当たってしまう。思わず身を引いたダイスケとエリカは、お互いの不器用さに笑ってしまった。


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